祇園の御茶屋さんじゃないですが、弁護士は永らく「一見さんお断り」の世界に生きてきました。ですから、紹介者もなしに突然法律事務所の門を叩こうという人に対しては、非常に敷居が高い存在だったことは否めません。
2000年10月に弁護士の広告が解禁され、徐々に弁護士の広告も増えては来ていますが、弁護士に相談しようという側の市民の方々にとっても、まだどのような基準で弁護士を選んだらいいのかの評価基準はあまり確立していないと思われます。
このページはそのような方のために、弁護士に依頼する際の何がしかの基準としていただこうと思っています。
まずイメージしてもらいたいのは、「弁護士は社会生活上の『医者』である」ということです。
世の中には医者にしょっちゅうかかる人もいれば、医者要らずと言う人もいます。医者要らず、という方は、きわめて頑健な体の持ち主で、滅多に風邪も引かないか、引いても自己流の治療で治してしまう、あるいは強靱な自己回復力でちょっと節制すればすぐ健康回復という方でしょう。
しかし、中には単なる体調不良に見えて、命に関わる大病の初期症状という場合もあります。この場合には自己流で治そうとしているうちに、手遅れになってしまう可能性もあります。それを考えれば、ちょっとした体調不良に見えても、できるだけ信頼できる主治医に見てもらった方が安全であるに決まってます。
弁護士も同じです。多少の法律知識があって、多少のトラブルくらいなら解決できる交渉能力の持ち主の方でも、生兵法で対処しているうちに、深刻なトラブルになってしまう可能性もあります。ですから、一番いいのはちょっとしたことでも気さくに相談できる主治医のような弁護士を知っておくことでしょう。
「弁護士なんか関係なくやってきたよ。」という方でも、実際には法的紛争が絡む細かいトラブルはたくさん遭遇しているはずです。例えば、
などはよくありませんか?
トラブルが起こり、さあ困った、弁護士に頼まなきゃと知り合いを聞き回ったところ、とある知り合いが「自分の知っているいい弁護士がいる」という。さあ、無条件に信頼していいものか?
ま、会う前から無条件に信頼していい弁護士などいませんね。それはいいとしても、会ってしまうとその知り合いに対する義理から「頼まないと悪いな」という気持ちになってしまい、冷静な判断ができないおそれはあるでしょう。
従って、会う前にある程度、客観的に「信頼できそうだ」という最低限の条件を確認しておくべきでしょう。
最も大事なのは、その弁護士を紹介してくれた当の本人が信頼できる人か?という点でしょう。誠実さに欠ける人が紹介してくれる人というのは、やはりどこか誠実さに欠けていることが多いように思われます。
次に確認すべきは、紹介者とその弁護士はどのようなつながりなのか?という点です。
しかし、最後は直接自分が会って確かめてみないと最終的には分からないことは言うまでもありませんので、くれぐれも即断はしないようにご注意を。
知り合いに聞いても弁護士が見あたらない。
そんなときはどうすべきか?
一番安全なのは、弁護士会の主催する法律相談を利用することでしょう。東京弁護士会を例に取れば、こちらをどうぞ。
なぜ、弁護士会の法律相談が最も安全なのか?
からです。
せっかく広告があるのだから、広告で良さそうな弁護士を捜したい。そのお気持ちはもっともです。
しかしながら、まだ弁護士広告は解禁されたばかり。広告の手法が確立されていないこともあり、まだほとんどの弁護士が広告を出すことに対しては「様子見」であるのが事実です。
そのような中で、現在広告を出しているのは、ベンチャー精神を持った気鋭の弁護士と、怪しげな弁護士の2種類が多いという傾向にあります。
広告媒体でいえば、週刊誌やスポーツ新聞、電車内の広告等は怪しげな弁護士の割合が高いように思われます。HPは、結構大手法律事務所も作成している場合が多いので、まだましな状況といえましょう。
一番注意すべきは、債務整理を依頼しようとしている方々。
債務整理のプロであることを売り物にしている広告の弁護士は、現状ではかなりの部分「提携弁護士」の疑いがある人のため、ご注意下さい。
本当の債務整理のプロはほとんどの場合、弁護士会の法律相談の担当もやってます。逆にそのような弁護士は「債務整理のプロ」であることを必要以上にひけらかしたりしません。
その他、あまりにバラ色の夢を振りまくような宣伝文句が多い弁護士は逆に「?」と思った方がいいでしょう。本当の弁護士は、常にリスクを説明しながら(つまり厳しいことも言いながら)相談に乗るものです。
「提携弁護士」とは、紹介屋、整理屋と結託した弁護士のことです。
………といっても何だかおわかりにならない方が多いかも知れません。
神田や新橋、新宿の駅のトイレや電話ボックスには必ずと言っていいほど「借入先が多くてお困りの方、低利で一本化します!」的な文句のチラシがおいてあります。
藁をもすがる思いで、このチラシの連絡先に足を運んでみると、窓口の人が「お気の毒ですが、審査の結果、あなたには貸せません」と冷たい宣告。がっくりするあなたに対して、親切そうな顔で「もしお困りでしたら、いい弁護士さんを知っていますよ」と、誘いの言葉が来ます。
これが「紹介屋」です。
渡された地図を頼りにその事務所に行ってみると、こちらの用向きなどすっかり分かってる風に出迎えられます。ここであなたがもし事務所の中を注意深く見れば(見られる場所を通った場合の話ですが)、事務員の数が妙に多いのに気がつくでしょう。
応接室に通され、待っていると、弁護士さんらしき人が入ってきて、あなたに名刺を渡します。しかし、渡された名刺の肩書きをよく見ると「事務局長」と書いてあります。
簡単に債務整理の説明をされ、契約書に書き込む段階になって、ようやく本物の弁護士が登場。名刺を渡されます。しかし、この弁護士、名刺を渡すと、話もそぞろに「あとはこの人とよく相談して頑張ってください」と退席してしまいます。以後、あなたがこの弁護士の顔を見る機会はありません。
この「事務局長」が「整理屋」です。そして紹介屋、整理屋と結託しているから「提携弁護士」と呼ばれるのです。
で、具体的に何が問題なのか。
つまり、あなたにとって大損をする可能性があります。
提携弁護士に事件を依頼することがどれほど危険かということについては、医者の場合に当てはめて考えてみてください。
あなたが病気になったとして、病院に行った場合、医者は出てきて自己紹介をしただけで奥に引っ込んでしまい、あとは看護婦さんが病状を聞き、聴診器をあて、薬を処方したとしたら、あなたはその病院に引き続きみてもらう気がしますか?
提携弁護士に依頼するのも同じことなのです。
Q5で述べたように、業者から紹介されたのであれば、それはかなり危険です。しかしながら、Q4で述べたように、広告を頼りに弁護士に依頼した場合、見分けるにはどうしたらよいか。
以下の8項目のうち、3つ以上当てはまる場合は相当提携弁護士の疑いがあると言っていいと思います。
←Q5で説明したとおりです。
←一般の国内事件を扱う法律事務所の場合、通常弁護士と事務員の人数比は、1対1か1対2、多くても1対5くらいです。それ以上多い場合、なぜそんなに事務員ばかり多いのか疑ってみる必要があります。
←破産申立になると、弁護士が裁判所に出頭する必要があるため、整理屋単独では事件が進まなくなることから、整理屋はいやがります。破産になると毎月返済資金をプールさせるという口実でそこから弁護士報酬をごっそり抜くという技も使えないという理由もあります。
←最近は契約書にも書いてあったりしますが、あまり説明されないことも多いです。
←東京の弁護士会では、任意整理の場合、現在業者数を基準として着手金を決めています。提携弁護士の場合、負債総額の1割(あるいは数%)という基準が多く、ほとんどの場合相当割高になります。
←多くの提携弁護士の場合、こうした進行状況はほとんど報告されません。業者との和解交渉も依頼者の意思に関係なく勝手に行われ、知らない間に知らない内容の和解契約が行われている(あるいはほったらかしにされている)ことがほとんどです。
←東京の弁護士会では、業者に全取引経過を開示させ、その取引を通じて利息制限法引き直し計算をした残額を残元本とし、この残元本を分割で支払う提案をするよう統一基準が定められています。提携弁護士は、たとえ広告では「利息制限法引き直し」を謳っていても、実際には業者に全取引を開示させる交渉をするのは面倒なことから、引き直し計算をしないまま、業者の言いなりの額で和解を結んでしまう場合が多くあります。
←6と同じで、多くの提携弁護士の場合、報告がありません。
既に事件を依頼している弁護士にメールで連絡を取ったりするのは、当然、何の問題もありません。ここで取り上げるのは、弁護士と一度も顔を合わせない段階で、いきなりメールで法律相談をしてその回答を受ける場合です。
HPを開いている弁護士の場合、「メールによる法律相談」に応じていることがよくあります。
この「メールによる法律相談」の有効性については、弁護士の間でもまだ評価がまっぷたつに別れていますが、私自身は現時点では消極的です。
その理由は、
からです。1は純粋に弁護士の側のリスクの問題、といえなくもありませんが、弁護士もリスクをおそれる結果、踏み込んだ見解を示せなくなることになります。2は正確な回答ができない恐れがある、という意味で直接相談者の不利益を生むリスクがあります。
私の知っている範囲でも、従前メールによる有料の法律相談を受け付けていた弁護士が中止していたりしますので、現状ではデメリットがメリットを上回っていると言わざるを得ません。
しかしながら、弁護士への相談のきっかけとしてメールをご送付していただくこと自体は有効だと思われます(人によっては、突然法律事務所に電話をかけるよりもメールで打診してみる方が気楽に出来るでしょうし)。そこで、私自身もメールによる「法律相談の予約」のみを受け付けております。
仮にメールによる法律相談を受け付けている弁護士に相談をする場合には、以上のようなリスクがあることを心得た上で相談されるようお願いします。
よく、初対面の方から「専門分野は何ですか?」と聞かれますが、私はじっくり説明する時間がないときは「何でも屋です」と答えています。
実際問題、日本の弁護士は大多数が「何でも屋」です。
民事専門、刑事専門という程度なら、日本でも「刑事はちょっと苦手で………」という弁護士は結構いますから、「民事専門」弁護士はかなりいる、ということになるでしょう。逆に日本では「刑事専門」は経営が成り立たないため、ほとんどいないと行っても過言ではありません。ですから、「民事専門」と威張ってみたところで、それはその弁護士が「刑事は扱わない」ことを示すに過ぎず、民事事件が得意だと言うことにはなりません。
そんな中でも、専門分野として成立している分野がいくつかはあります。
海外との交渉、契約締結等の業務を中心とした企業法務を専門に扱う事務所は日本でも相当数存在し、「渉外事務所」と呼ばれています。
特許紛争などを専門に扱う事務所は、弁理士と合同で事務所を作っている場合が多く、事務所名が「特許法律事務所」などとなっているので、比較的容易に判別できます。
これは保険会社の顧問弁護士となって加害者側の代理人ばかりをやる場合と被害者側の代理人に特化している場合と2種類あります。
これは破産申立に特化しているのではなく、大型の破産管財事件や会社更生事件等を一手に引き受けるタイプの事務所です。
その他の分野は、現状では弁護士の「得意分野」となる場合はあるでしょうが、現状ではその一分野だけで経営していけるほどの依頼が集まらないため、専門弁護士として特化するには至っていないようです。また、医者と異なり弁護士には専門認定制度がないため、「専門分野」「得意分野」というのは、現在広告で表示が認められていません。
また、上記の分野でも、専門的な事務所にいなくてもその分野にある程度通じている弁護士は少なくありません。例えば私も知的財産権事件を扱ったりしています。
Q8で説明したように、現在、弁護士が「専門分野」「得意分野」を広告するのは禁じられています。「特に関心を持って取り組んでいる分野」とか「取り扱い分野」の表示は認められておりますので、この表示を手がかりに弁護士を捜すことはできるでしょう。
しかし、「取り扱い分野」なんてのは、医者の「専門医」に比べたら、はるかに客観性に欠ける表示であることは否めません。
「その分野の専門家である弁護士でなければ、心配だ」という方も多いかも知れませんが、Q8で述べたように、そもそも日本ではスペシャリストがいる専門分野はそれほど多くありません。
そもそもどんな弁護士といえども、全ての分野に精通しているわけではありません。それなのに「何でも屋」が成り立つのは、1.基本となる法知識を理解していれば、応用により解決できることがほとんどである、2.適切な調査能力さえ持っていれば、その分野の解決方法を見つけることが可能である、という理由によります。
実際、弁護士が弁護士たる所以は、「法律」を知っているからではなく、「問題となる法的解決方法を調査する方法」を知っているからとさえ言えます。
ですから、通常の民事事件で弁護士の専門性を余り心配する必要はないでしょう。むしろ、その弁護士の調査能力のセンスに気をつけるべきです。知らないことを知ったかぶりするのではなく、次回会ったときにきちんと調べて答えを見つけているかを気にすべきでしょう。
アメリカの何千人もいるロー・ファームには到底かないませんが、日本にも弁護士100人に迫ろうかという大事務所があると思えば、弁護士が一人でやっている個人事務所も多数あります(というか、数で言えば個人事務所の方が圧倒的に多いです)
まずこの両者、弁護士の能力に何か差があるのか、といえば、別にそのようなことはありません。大事務所にも使えない弁護士はいるでしょうし、個人事務所でありながらその世界では知らない人はいない辣腕弁護士もいます。
では、何が違うかと言えば、大事務所ほど、大きな案件をその事務所だけで引き受けられるという強みはあるでしょう。実際、大企業はいざ事件となれば大量の労力をつぎ込む必要のあるものが多くなるため、どうしても大事務所に頼る傾向があります。
この点、小規模な事務所は大きな案件は受けられないかというと、全くだめと言うことはなくて、そういう事務所の場合は他の事務所の弁護士と連携することで、大きな事件を受任することもあります。でも、効率性という点では大事務所にはかなわないかも知れません。
では、やはり、大事務所の方が質の高い法的サービスを受けられるのか?というと、これはケースバイケースです。
前述のように大量の労力を必要とする事件であればやはり大事務所とは思われます。しかし、大事務所であればあるほど、個々の弁護士の自由裁量の幅は少なくなりがちです。大きな事件を扱っていると言っても、分業制でやっているため、下っ端の弁護士には全体像は見えないでしょう。
これに対して、小さな事務所の弁護士は、小さな事件といえども常に自分が全責任を負って遂行するわけですから、事件の全体像をつかむ能力には長けています。大事務所の多くの弁護士より、自由裁量の幅が広い分だけ、フットワークが軽いということも期待できるでしょう。
言ってしまえば、大事務所の弁護士は有能なサラリーマン、小さい事務所の弁護士はやり手の個人事業家といえるでしょうか。医者に例えるとすれば、大事務所は大病院、小さい事務所は町医者だと思ってもらって結構です。検査機材が揃っていて、最新の検査や治療が受けられるのが大病院、しかし、3時間待たされて診察は3分で終わり、個々の患者の個性までは対応してくれない欠点もある。これに対し、町医者は最新の治療は望むべくもないが、かかりつけになることで気軽に何でも相談できる存在になる。法律事務所も似たものがあるような気がします。
ですから、どちらを選ぶかは、自分が抱えている事件の性質を考慮し、自分がどのような法的サービスを望んでいるのかを考えてから選んでいただければよいでしょう。
ここで亀の甲より年の功、と言ってしまえば、はいそれまでで、若手の端くれたる私の出番はなくなってしまうので、少し言わせてください。
確かに弁護士にとって、場数を踏んでいるという経験はかけがえのない財産です。単に度胸が据わっている、ブラフが効く、駆け引きがうまくなるということのほかにも、ノウハウという財産は単に勉強で得られた知識にはかなわないものがあることは認めざるを得ません。
しかし、年とともに頭脳はやはり柔軟性を失っていくものです。特に変革期の現在、新しい立法や運用についていくのはなかなか大変なことです。また、相談者の話一つ聞くことをとっても、年とともに、経験により「聞き上手」になる技術と、頭が固くなって先入観が抜けなくなる可能性と相半ばします。
これに対し、若手弁護士は経験こそありませんが、それを補ってあまりある熱心さとフットワークの軽さがあってこそ、ベテラン弁護士をしのぐ場合もあります。
なお、司法試験合格者は必ずしも若者だけではないため、年齢だけで弁護士の経験を判断するのは危険です。同業者では、司法研修所を卒業した「期」によって、経験年数が判断できます。
例えば、私は48期ですから、平成14年現在、弁護士7年目です。当事務所の所長、由岐は36期で、弁護士19年目です。弁護士会内では、私は駆け出しから中堅にさしかかり始めたところ、由岐は中堅からベテランにさしかかり始めたところといえましょうか。
一般的には、弁護士登録後3年程度あれば、一般的な事件については最低限のノウハウは身につけているとは言えるでしょう。事件の見通しについても、ある程度はわかるため、見通しを誤って後で難渋する確率は低いといえましょう。
それより経験の浅い弁護士の場合は、事件の見通しという意味ではやや不安があることは事実ですが、きちんとした調査能力と熱意があれば、これを補うことは可能でしょう。
3年以上以後は、基本的には経験年数が多ければ多いほど、ノウハウはあると思ってもいいでしょうが、前述のように、「老害」が発現していないかには注意が必要かもしれません。
ここが医者にかかるのとは最も大きく違うことかも知れません。
医者であれば、診察時間が決まっていて、その間に行けば間違いなく診察は受けられます。しかし弁護士の場合、予約なしに飛び込みで事務所に行ったとして、弁護士が相談に応じてくれる可能性はかなり低いと言わざるを得ないでしょう。
その理由は、
ですから、弁護士に相談される場合にはあらかじめ電話やメールで予約を入れていただくことは不可欠といってよいでしょう。
まず、持ち物です。
弁護士に相談するようなトラブルですから、契約書や請求書、通知文など、何か参考になる書面や資料がある場合が多いでしょう。手ぶらで相談に行っても、弁護士は相談者のいっていることが本当に正しいのかどうか、判別できません。書面を見ればたちどころに問題点がわかるはずなのに、相談者が問題点の把握を間違えているために話が飛んでもない方向に行ってしまう場合もあります。必ず、関係のありそうな資料はお持ち下さい。
次に相談の仕方。
突き放すような言い方をするようですが、弁護士は相談者の身の上話を聞くために相談を受けているわけではありません。トラブルの内容を把握し、具体的な解決方法を探るために相談を聞いているのです。
ですから、できるだけ率直に、修飾や憶測、誇張を交えず事実の概要とあなたが困っている点を伝え、解決の方向性について希望がある場合にはそれも率直に話すべきでしょう。
背景事情が長くなる場合には、時系列に沿ってメモにまとめてきてくださると、弁護士は大変助かります。問題点や疑問点を箇条書きにメモでまとめておけば、あなた自身も聞きはぐれることはなくなるでしょう。
それから、一番大切なことは、「あなたにとって一番不利だと思われる事情も含めて弁護士に話す。隠し立てをしない」ということです。
弁護士には守秘義務がありますから、あなたが不利な事情を話したからといって、その事実が相手方に漏れる心配はありません。むしろ、あなたが不利な事情を隠すことにより、弁護士が判断を誤り、解決の方向性を誤ってしまうことが少なからずあります。
場合によっては取り返しのつかないミスにつながる可能性もあります。今ある手持ちの材料を全て弁護士と共有した上でないと、正しい解決は望めません。
具体的には相談する直の相手の弁護士によって異なりますので、直接問い合わせていただくのが一番です。という前提の元で、一般論を述べれば………
東京弁護士会の報酬会規によれば、法律相談料は、
- 初回市民法律相談30分ごとに5,000円
(事件単位で個人から受ける初めての法律相談で、事業に関するものを除く)
- その他の一般法律相談30分ごとに5,000円以上25,000円以下
と規定されています。
この規定は一つの目安に過ぎませんので、渉外弁護士など、これより高い相談料を取る弁護士もいます。しかしながら、普通の相談であれば、まあ1時間で1万円程度が相場と思ってだいたい結構かと思います。
なお、この相談料は、あくまで当該相談自体にかかる料金です。相談した結果、弁護士にその場の助言以上の何らかの行動を依頼する場合には当然そのための料金がかかりますので、ご注意下さい。
逆に、相談の結果、直ちに弁護士が何らかのアクションを起こす方がいいという話になり、あなたがすぐにその弁護士に正式に依頼し、着手金等の弁護士費用を支払う場合には、その回の法律相談料は独立しては支払わなくてもいい(つまり着手金等に含まれている扱いを取る)場合もあります。私などはこのような扱いをよく取っています。
とある弁護士に初めて相談に行った結果、何らかのアクションを起こすべきという結論に至ったとき、普通はその弁護士に「お願いします」という流れになると思われます。あなたが選んだ弁護士ですから、ケチをつけるつもりはありませんが、後で後悔しないために、一応私なりのチェック項目を挙げておきます。
これから何をすべきなのかについて、ろくに説明もせずに「私に任しておきなさい」という弁護士は、太っ腹な人とは言えるかも知れませんが、リスクが高い弁護士であるのは確かでしょう。
最悪の場合、着手金は支払ったけれども、その後何にもしてくれずに、結局依頼した件は手遅れに………という悪夢のような結末も考えられます。
依頼する件について、交渉をするのか裁判を起こすのか、どのような手順を踏むのか、どのような解決を目指すのか、弁護士はできる限り見通しを依頼者に説明する義務があります。これらの点について、何も具体的に話してくれない弁護士は注意した方が無難です。
法的紛争において、一方が100%悪く一方が全く落ち度がない、あるいは一方には何の言い分も成り立たない、という事態はあまりありません。双方に言い分があるから紛争が起こるのです。
相手のあるトラブルである以上、結果が当方にとって常に満足行くものとは限りません。裁判を起こしても、敗訴の危険は常にあります。
それを、「必ず勝てる」とか「絶対大丈夫」という弁護士は、ちょっと注意した方が無難でしょう。
「良薬口に苦し」という言葉がありますが、弁護士も同じです。あなたにとって耳の痛いこと、あなたにとっての弱みも敢えて指摘してくれる弁護士こそ、本当は信頼に足るものと考えるべきです。
弁護士費用には、弁護士会の定める一定の基準があり、具体的な金額はその事件の性質を考えて、弁護士と依頼者の協議で決定されます。といっても、初めて弁護士に依頼される方にとっては「協議」といわれても、相場も根拠もわからず、弁護士の言い値を飲む場合がほとんどでしょう。
ですから、具体的な金額について、せめてどういう算定基準に基づいてこの金額になるのかは弁護士に説明を求めるべきでしょう。この点について、はぐらかそうとしたり、訳のわからない説明をする弁護士は、注意すべきでしょう。
まず、実費がかかります。
実費には、交通費、通信費等の経費のほか、訴訟提起のためには郵便切手(数千円程度)、印紙代(事件の種類によります)がかかります。
純粋に弁護士が受け取る報酬としては、着手金、中間報酬、成功報酬等があります。これらの費用に代えて、いわゆるタイムチャージ制を取る弁護士もあります。これはその事件の対応に従事した時間について、1時間あたりの単価を決めて報酬を受け取る仕組みです。
この他、地方出張の場合には日当を受け取ってよいことになっています。
弁護士がある事件を引き受ける場合、その事件が成功裏のうちに解決するかは、やってみなければわからないものといわざるを得ません。紛争には常に相手方が存在する以上、最初のもくろみ通りに解決することは必ずしも保障できませんし、同じ種類の事件は同じような手法を取れば必ず解決できるとも限らないからです。
その一方で、弁護士としても、事件受任の当初から、一定の解決を目指して取るべき手段を取り、時間をかけて事件に対処することは事実ですので、その見返りとして、事件を受任する段階で契約金のような形でいただくのが「着手金」です。
「着手金」とは文字通り、着手するためにいただくお金であり、支払われるまでは弁護士は事件に着手しなくてよいことになっています。また、事件の結果がどうあれ原則としてお返しはしません。
これに対し、事件が成功裏のうちに解決し、依頼者が一定の利益を得たと考えられる場合、その利益の程度に応じて弁護士にも分け前を下さい、というのが成功報酬です。成功報酬ですから、当然、依頼者が何の利益を得ていない場合にはいただくことはありません。
つまり、弁護士を頼む場合には、原則として最初と最後にお金がかかることになります。
弁護士の着手金も報酬金も、原則として解決すべき争いの対象となる経済的利益がいくらかによって決するものとされています。
通常の訴訟事件を例に取りましょう。
日弁連の報酬基準(近い将来なくなる可能性が強いですが)によれば、一般の訴訟事件の着手金は、
となっています。
例えば1,000万円の売掛金のうち、300万円は回収済みだが、残り700万円を支払ってもらえない。そこで訴訟を起こすことを弁護士に頼んだ場合、着手金はいくらかかるでしょうか。
この場合、回収すべき700万円が経済的利益の額となります。
上記の計算式に当てはめると、300万円を超え3,000万円以下の部分にあてはまりますので、700万円×5%+9万円=44万円が着手金の基準額になります。
しかし、日弁連の基準では、同時に「事件の難易によって、30%の範囲内で増減可能」とされていますので、結局着手金の額は、30万8,000円から57万2,000円の範囲内ということになります。
実際にはほとんどの弁護士は、日弁連の基準のうち、30%の「増額」規定の方はあまり使っていないと思われます。
成功報酬の額は、実際に得た利益が「経済的利益」となります。従って、裁判で負けてしまった場合には、原則として報酬は発生しません(タイムチャージ制や特約を結んでいた場合を除きます)。
日弁連の報酬基準(近い将来なくなる可能性が強いですが)によれば、一般の訴訟事件の報酬は、基本的に着手金の倍です。すなわち、
となっています。
Q18で取り上げた例の場合、例えば裁判の結果、500万円の回収に成功した場合、この500万円が経済的利益と考えます。
上記の計算式に当てはめると、500万円×10%+18万円=68万円が報酬金の基準額です。
報酬についても「事件の難易によって、30%の範囲内で増減可能」とされていますので、報酬金の額は、47万6,000円から88万4,000円の範囲内ということになります。
実際にはほとんどの弁護士は、日弁連の基準のうち、30%の「増額」規定の方はあまり使っていないと思われるというのも着手金の場合と同じです。
債務整理の場合、上述の「経済的利益」の基準はあまり妥当しません。日弁連の報酬基準もあるにはありますが、ある程度以上の事業規模の事業家や企業を念頭に定められているため、給与所得者や零細事業の方の債務整理に適用すると、あまりにも非現実的な金額になってしまいます。
そこで、東京3会では、クレジット・サラ金法律相談センターの相談担当弁護士に対して独自の基準を定めており(これもなくなるかも?)、当職もこの相談で受けた事件はもちろん、他のルートから受けた事件に関しても、原則この基準に準じて弁護士報酬を定めています。
着手金2万円×債権者数
成功報酬和解した債権者1社ごとに2万円
+(債権者主張の残元金-和解金額)×10%
+(過払い金を交渉によって返還させた場合はその金額)×20%
例えば、ある債権者が当初、50万円の残元金を主張していたが、利息制限法に基づく引き直し計算により、逆に35万円の過払いであることが判明し、交渉によって30万円を返還させて和解した場合、この債権者についての成功報酬は、2万円+(50万円-0)×10%+30万円×20%=12万円になります。
債権者数 | 着手金 |
---|---|
10社以下 | 20万円 |
11社から15社 | 25万円 |
16社以上 | 30万円 |
成功報酬は免責決定が出た時点で着手金と同額です。