本日、日弁連の事業承継問題研修会なるものに出席してきました。
これは昨年の同時期にも行われた研修の第2弾で、講師陣もほぼ共通ですが、内容的には1年分のアップデートが行われているもののようです。
昨年の記事でも触れたとおり、日弁連の関連プロジェクトチームの一員であることもあって、興味を持っている分野ですが、まだまだ「事業承継」という分野を弁護士に相談されようという方は少ないような気がします。むしろ、圧倒的にそのような問題は、顧問の税理士さんに相談しておられる例が多いようです。
中小企業の事業承継においては、その企業の事業に必要な資産、特に株式をいかに分散させずに後継者に集中させるかが重要なポイントです。後継者に資産、株式が集中していない場合、相続人同士の紛争に企業が巻き込まれ、企業の事業基盤が破壊されることも少なくないのです。
税理士批判を展開するつもりは毛頭ありませんが、税理士さんというのは、やはり職業柄、いかに「税金」を少なくするか、という観点から相続対策を行う場合が多いため、「事業承継」という観点から見ると逆効果であることをやってしまう例が散見されます。一番多いと思われるのが、相続税申告において、配当還元価額方式の適用を受けて節税を図ることを目的に、甥や姪等に5%未満の株式を生前贈与してしまう場合です。
一度分散してしまった株式を再度集中させるのは容易ではありません。株式の買い取り等は(事前に手当がない限り)相手方の同意がなければ無理ですし、新規発行や交換、種類変更なども、資金の調達、株主総会の特別決議、定款変更等の様々なハードルがあります。最悪の場合、企業の運営自体を断念せざるを得ないこともあり得るのです。
従って、中小企業のオーナーとしては、少なくとも遺言で後継者に事業用資産と株式を集中させることだけはやっておく必要がありますし、その場合に他の相続人の遺留分を害しないか、害しそうな場合はどうするか、考えておく必要があります。また、定款変更により、議決権制限株や、黄金株を発行し、事業承継に役立てるというアイデアもあり得ます。
ま、とにかく、現状を分析し、後継者を見定め、さらに後継者への移行のためのハードルを順々に考えていかないと、せっかくオーナーが手塩にかけてきた企業が達行かなくなってしまう可能性があるわけで、ご検討いただきたい分野です。
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