清掃や落書き消去、判決に「社会奉仕」導入…政府方針
政府は、裁判の判決で懲役刑などの執行を猶予する条件として、公園の清掃や落書きの消去などを無報酬で行うことを命じる「社会奉仕命令」を導入する方針を固めた。
実刑と執行猶予では大きな差があり、中間的な処遇が必要と判断した。新たな選択肢が加わることで執行猶予の判決が増え、刑務所の過剰収容に歯止めをかける効果も狙っている。政府は2008年中にも、刑法と刑事訴訟法の改正案を国会に提出することを目指している。
社会奉仕命令の導入により、裁判所の懲役や禁固の判決は、〈1〉実刑判決〈2〉社会奉仕命令を条件にした執行猶予付きの判決〈3〉条件のない執行猶予付きの判決――という選択肢ができることになる。
「社会奉仕命令」ですか…司法試験受験で、当時の法律選択科目(今は存在しない)で「刑事政策」を選択していた私としては、勉強した記憶があります。「我が国における社会奉仕命令の導入の是非について論ぜよ」とかいう問題の答案を準備したっけ。なんて書いたのかはもはや記憶がありませんが。当時はただの空想政策だったことがあっさり現実化しちゃうわけですね。
私個人は、社会奉仕命令の導入自体は反対ではありませんが、懸念されることもちらほら。まず、政府はこの制度の導入により、従前実刑判決になっていた事例が執行猶予に移行し、刑務所の過剰収容が解消されることを狙っているとのことですが、果たして目論見通り行くか?昨今の厳罰化の流れから行くと、従前ただの執行猶予で終わっていたものに社会奉仕命令が付加されるだけで、実刑の事例が減少することにはならない危険もあります。
また、清掃等の作業が社会奉仕命令の内容とされるようですが、これがプラスに出れば受刑者自身の教育と、社会の受刑者を見る目の寛容化につながることになりますが、裏目に出ると、こうしたボランティア作業自体が「刑罰」的なイメージとなってかえって受刑者に対する差別意識が助長される危険もあります(昨今の情勢からはけっこう危ない)。うーむ、記憶がないといいながら、昔の自分の答案をだんだん思い出してきました。
こうした懸念事項を払拭するには、制度に関する社会の理解のみならず、司法全体に対する市民の深いレベルでの理解を慣用していくことが不可欠でしょうね。
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