ついに、法務省が舵を反対方向に切り始めるのかしら。
司法試験合格者「年3000人」見直しも・法相、3月までに研究会 司法試験の合格者を2010年までに毎年3000人とする政府目標について、鳩山邦夫法相は25日の閣議後会見で「やはり3000人というのは多すぎるのではないか」と述べ、3月までに法務省内に研究会を設け、見直しを検討する方針を示した。
司法改革で、司法試験合格者を2010年に3000人とする計画が閣議決定された経緯はこちら。
実際に法科大学院が開設され、合格者が急増する中で、新人弁護士の就職難が現実化し、地方会を中心に、「2010年3000人」の見直しを求める声が上がり始め、2月8日に投票日を迎える日弁連会長選でも、人口問題が一題争点となっていました。
私自身は、前から言っていることですが、司法改革の示した方向性自体はある種の理想を提示したものだと評価していますが、こと法曹人口の増加に関しては、インフラの整備と社会の側のニーズを無視した、あまりに拙速な計画だったと思っています。年間1000人→年間3000人の増加をたった10年足らずで行おうというのは、あまりにも無謀な実験です。20年から30年かけるつもりでじっくり取り組めば、混乱もさほど生じず、むしろ理想が実現される可能性が高かったのではないでしょうかね。
実は日弁連執行部も、2年前から(一部の司法改革原理主義者を除いて)「ちょっと拙速だったかな」と反省している節もあるのですが、日弁連が主導して「見直すべきだ!」と言い出せないでいるのは、過去に日弁連が弁護士増員に消極的だった時代に、世論の支持を全く得られず、90年代を通じて人口論では孤立し続けたという苦い経験がトラウマになっているからのようです。なので、法務省がこのようなことを言い出してくれたのはある意味、御の字かも。
ただ、yahoo!のクリックリサーチによると、「法的紛争の増加や、弁護士の数が地域によって偏在していることなどから、司法試験の合格者数を3000人程度に増やすことが目標となっています。質の低下や就職難などを懸念する声もありますが、合格者を増やすことのメリットとデメリットはどちらが大きい? 」という問いに対し、今現在の段階では、「デメリットが大きい」という回答が60%を占めているというのは驚きです。やはり、弁護士の就職難というニュースなどが、世間的にもインパクトがあったのでしょうか。
ま、法務省自体は、どっちかというと増進反対派の鳩山法相の意を汲んで研究会を作った可能性が高いのですが、現実に6000名近い定員になっている法科大学院をどうするか考えないと、減員は達成できないわけで、舵を切るにしても気の重い話ですね。
本日、日弁連の事業承継問題研修会なるものに出席してきました。
これは昨年の同時期にも行われた研修の第2弾で、講師陣もほぼ共通ですが、内容的には1年分のアップデートが行われているもののようです。
昨年の記事でも触れたとおり、日弁連の関連プロジェクトチームの一員であることもあって、興味を持っている分野ですが、まだまだ「事業承継」という分野を弁護士に相談されようという方は少ないような気がします。むしろ、圧倒的にそのような問題は、顧問の税理士さんに相談しておられる例が多いようです。
中小企業の事業承継においては、その企業の事業に必要な資産、特に株式をいかに分散させずに後継者に集中させるかが重要なポイントです。後継者に資産、株式が集中していない場合、相続人同士の紛争に企業が巻き込まれ、企業の事業基盤が破壊されることも少なくないのです。
税理士批判を展開するつもりは毛頭ありませんが、税理士さんというのは、やはり職業柄、いかに「税金」を少なくするか、という観点から相続対策を行う場合が多いため、「事業承継」という観点から見ると逆効果であることをやってしまう例が散見されます。一番多いと思われるのが、相続税申告において、配当還元価額方式の適用を受けて節税を図ることを目的に、甥や姪等に5%未満の株式を生前贈与してしまう場合です。
一度分散してしまった株式を再度集中させるのは容易ではありません。株式の買い取り等は(事前に手当がない限り)相手方の同意がなければ無理ですし、新規発行や交換、種類変更なども、資金の調達、株主総会の特別決議、定款変更等の様々なハードルがあります。最悪の場合、企業の運営自体を断念せざるを得ないこともあり得るのです。
従って、中小企業のオーナーとしては、少なくとも遺言で後継者に事業用資産と株式を集中させることだけはやっておく必要がありますし、その場合に他の相続人の遺留分を害しないか、害しそうな場合はどうするか、考えておく必要があります。また、定款変更により、議決権制限株や、黄金株を発行し、事業承継に役立てるというアイデアもあり得ます。
ま、とにかく、現状を分析し、後継者を見定め、さらに後継者への移行のためのハードルを順々に考えていかないと、せっかくオーナーが手塩にかけてきた企業が達行かなくなってしまう可能性があるわけで、ご検討いただきたい分野です。
ありがとうございます。
しかし、なぜか、更新の頻度にかかわらず、アクセス頻度はあまり変わらないのですね。相変わらずspamコメントやspamトラックバックが多いところを見ると、ロボット巡回もかなり多い?
清掃や落書き消去、判決に「社会奉仕」導入…政府方針
政府は、裁判の判決で懲役刑などの執行を猶予する条件として、公園の清掃や落書きの消去などを無報酬で行うことを命じる「社会奉仕命令」を導入する方針を固めた。
実刑と執行猶予では大きな差があり、中間的な処遇が必要と判断した。新たな選択肢が加わることで執行猶予の判決が増え、刑務所の過剰収容に歯止めをかける効果も狙っている。政府は2008年中にも、刑法と刑事訴訟法の改正案を国会に提出することを目指している。
社会奉仕命令の導入により、裁判所の懲役や禁固の判決は、〈1〉実刑判決〈2〉社会奉仕命令を条件にした執行猶予付きの判決〈3〉条件のない執行猶予付きの判決――という選択肢ができることになる。
「社会奉仕命令」ですか…司法試験受験で、当時の法律選択科目(今は存在しない)で「刑事政策」を選択していた私としては、勉強した記憶があります。「我が国における社会奉仕命令の導入の是非について論ぜよ」とかいう問題の答案を準備したっけ。なんて書いたのかはもはや記憶がありませんが。当時はただの空想政策だったことがあっさり現実化しちゃうわけですね。
私個人は、社会奉仕命令の導入自体は反対ではありませんが、懸念されることもちらほら。まず、政府はこの制度の導入により、従前実刑判決になっていた事例が執行猶予に移行し、刑務所の過剰収容が解消されることを狙っているとのことですが、果たして目論見通り行くか?昨今の厳罰化の流れから行くと、従前ただの執行猶予で終わっていたものに社会奉仕命令が付加されるだけで、実刑の事例が減少することにはならない危険もあります。
また、清掃等の作業が社会奉仕命令の内容とされるようですが、これがプラスに出れば受刑者自身の教育と、社会の受刑者を見る目の寛容化につながることになりますが、裏目に出ると、こうしたボランティア作業自体が「刑罰」的なイメージとなってかえって受刑者に対する差別意識が助長される危険もあります(昨今の情勢からはけっこう危ない)。うーむ、記憶がないといいながら、昔の自分の答案をだんだん思い出してきました。
こうした懸念事項を払拭するには、制度に関する社会の理解のみならず、司法全体に対する市民の深いレベルでの理解を慣用していくことが不可欠でしょうね。
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。本日から公式に執務開始です。
…といいつつ、週末から事務所で、年末に手がつけられなかった机周りの整理とか新しい本棚の組み立てとかやっていました。
それと、大晦日からなぜか変な風邪を引き込んでしまい(風邪症状がほとんどなくて、痰だけ絡む)、なかなか治らず本日午前中は医者に行く羽目になりました。
新年初日から、事務所に出遅れ、何だかしまらないスタートです。
弁護士の課外活動(別サイト)の、「ThinkPad Personal Load Test」を加筆しました。