久々にちょっと衝撃を食らったニュースが。
混合診療の禁止、違法…たった1人命の訴え
たった一人の原告の訴えが、国の健康保険制度の根幹を揺るがした。保険診療と保険外の診療を併用する「混合診療」を禁じた国の政策を違法とした7日の東京地裁判決。
弁護士として、事故などを扱っていると、よく「保険治療」か「保険外治療」か、といった問題に出会います。しかし、保険外治療を一つでも受けてしまうと、本来保険対象の治療まで自費負担にされてしまう制度に法律上の根拠があるのか、ということを深く考えたことは、正直言ってありませんでした。自分がその当事者になったわけではないにせよ、法的な論点として意識してすらいなかった自分にちょっとショックですね。
しかし、ショックを受けるべきは、私一人ではないようで、
訴訟を決意したが、相談した弁護士には「混合診療訴訟の経験がない」と、依頼を断られた。インターネットなどで訴訟に関する知識を一から学び、06年3月、弁護士には頼らず、1人で提訴。口頭弁論では「混合診療の禁止は法律のどこに書いてあるのか?」と、国側に素朴な疑問をぶつけてきた。その疑問に、判決は「混合診療について、保険が受け取れないと解釈できる法律上の根拠はない」と、明快に答えた。
との記事を前提にすれば、本来、我々弁護士が大弁護団を組んで論陣を張って裁判所の判断を引き出すべき問題について、代理人となる弁護士すらいなかったことになります。もちろん、原告の方が、どういうルートで何人の弁護士に相談されたのかはわかりませんので、ルートさえ変えれば、応援できる弁護士がいなかったとは思えません。しかし、このような画期的な判断の場に弁護士の一人もいなかったことについては、同じ弁護士界の一員としては悔しい限りですね。
最近、何か弁護士会内の下世話な人事の話ばかりで大変恐縮なのですが。。。
本日、法友会(私の入っている東京弁護士会内の派閥の大きい単位の方)の「人事委員会」でした。人事委員会って何をするかというと、弁護士会の人事に関する案件を派閥レベルで議論する、要は弁護士会の選挙のためのような委員会です。要は、東京弁護士会の会長とか、副会長の候補者として、派閥単位で擁立する人をこの委員会で選ぶわけです。
この選び方が非常にユニークというか何というか。名前を「あら選び」というそうです。
「あら選び」とは、出席した人事委員が、投票用紙を渡されて、とにかく本人の了解なんかいらないから、自薦・他薦を問わず、会長候補や副会長候補にふさわしいと思われる方を記入して、投票するわけです。しかし、この時点では票数を数えたりなんかしません。事務局側は、書かれた名前を片っ端からホワイトボードに列挙していくので、1票でも入れば、ホワイトボードに名前が載ってしまうわけですね。
そうすると、次に何をやるかというと、法友会を構成する11の小さな派閥は、自派閥で名前の出た人について、次回人事委員会までに意向を聞いてくる義務が生じるそうです。本人の意向なんかおかまいなしに勝手に誰が書いたともわからない票に基づいて、意向を確認しないといけないのですから、民主的なんだかよくわかりません。聞くところによると、こんなことをやるのはどうも法友会だけらしいのです。
で、前回の10月の人事委員会で、会長候補、副会長候補とも、実に多数の名前が挙げられておりました。
しかし、これは実は、表向きの話であって、実際には、前回の人事委員会の前に、事実上は会長候補、副会長候補ともに水面下で決まっているのですね。それなのに、こんなに名前が挙げられちゃっていったいどうするの?と訝しんでいたら、今回の人事委員会では、各小派閥から、予め水面下で決まっていた会長候補、副会長候補以外の方は、全員「本人に意向を伺ったが、出馬の意思なしということでした」という報告が挙げられ、めでたく当初の予定通りの候補者に落ち着きました。ああ、何という予定調和的な、20年前の自民党を見るような出来レース!!感動的とさえいえます(笑)
ところがです。今回は、引き続いて、日弁連理事の「あら選び」が行われたのですが、実は日弁連理事に関しては、まだ水面下で全く絞り込まれていない模様なのです。そのため、種々雑多なお名前が出ましたが、出来レースにできないもので、各小派閥のトップは「どうするの?」「困ったなあ」というお顔をして帰っていきました。聞くところによると、例年日弁連理事の候補者選考は、年明け頃に行われるので(そういえば私が口説かれたのも忘年会シーズンだった)、今年は「あら選び」が早すぎるのでは?という感じだそうです。どうやら法友会の執行部の勇み足だったようです。どうするんでしょうね。
ところで、この「あら選び」、「あら」の部分は本来漢字ではないのかと思って、先輩弁護士に聞くと、昔は確かに「粗選び」と言ったそうです。「粗」という字の語感が喜ばれないためにひらがなになっているのかも知れませんが、いずれにせよへんな言葉です。
昨日は日弁連の人権大会で、今年は浜松で行われました。
昨年に続き、参加し、ついでにまた家族を連れて延泊、観光かなあ、と思っていたのですが、何と後輩弁護士の結婚式が翌日に入って観光は早々に断念。
次に、大会の議事に参加するはずが、午後3時から「明日の司法と日弁連を創る会」の会議に参加して、法曹人口問題を中心とする議論に参加。
この「明日の司法と日弁連を創る会」って何かというと、2年に一度ある日弁連会長選に向けた、事実上の選挙対策団体です(毎回同じようなワンパターンのネーミングについては相変わらずですな)。今年の主流派は大阪のM先生が出馬の意向なのですが、東京の主流派たる法友会のメンバーとある種の政策協議をしたいという趣旨なのでしょうかね。法友会の政策委員会委員長のご下命なので、大会議事をすっ飛ばして、こちらの会議に参加し、主流派内反体制派?としての意見を述べてきました(私のスタンスは、2003年から変わっていません)。それにしても、人権大会の真っ最中に、同じ会場の別室で会議をやるとはどういう人権感覚?という批判を浴びそうですが、いいのかしら。
そして、例によって人事の話の花咲く懇親会は、公式の一次会→「創る会」主催の2次会→法友会の3次会→春秋会の4次会→さらに有志の5次会?までやって、宿に戻ったのは2時近くでした。トホホ。