弁護士 豊崎寿昌

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2007年10月

2007年10月31日

国選弁護と無罪

国選弁護人:無罪なら報酬加算…最高で倍額 1日から導入
法務省は30日、刑事裁判で無罪判決を勝ち取った国選弁護人に対し、通常より加算した報酬を支給することを決め、総合法律支援法に基づき報酬を支払っている日本司法支援センター(法テラス)に通知した。11月1日から施行する。私選弁護人に比べ国選弁護人は報酬が低く割にあわないとされており、改善を求めていた弁護士会サイドの意向をくんだ。

もともと国選弁護人の報酬は、国選弁護をきちんとやろうとした弁護人にとっては、事務所を経営する最低限の維持費にすら見合わないようなものでしたが、昨年10月に法テラスが国選弁護の報酬決定に関わるようになってから、基準は客観化されたものの、むしろ報酬が下がる例が続出し、現場の弁護士から強い不満が出ていました。また基準自体も、「無罪」についての成功報酬が一切認められていないという点が、もっとも批判されてきました。

それからすると、今回の改訂は、一歩前進ではありますが、肝心の加算額は、全部無罪の場合でも、50万円が上限だそうです。全部無罪事件を勝ち取るのに要する弁護人の労力からすると、まだまだ人をバカにしたような上限だと思わざるを得ません。事件の状況によって差異はあっていいものの、せめて上限は100万にはして欲しかったですが。

2007年10月26日

NOVAは更生するか

NOVA、会社更生法適用申請・全教室の運営を一時停止 経営が悪化していた英会話学校のNOVAは26日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請し、同地裁は財産の保全管理命令を出した。負債総額は439億円。取締役3人が25日夜に臨時取締役会を開き、創業者の猿橋望社長を解任し、更生法申請を決議した。現時点で30数万人とみられる受講生の多くは前払いの形で受講料を支払っており、今後は企業再建の行方とともに被害の救済策が焦点となる。

ワンマン経営者が最後に当事者能力を失い、他の役員に裏切られる形で法的整理に突入するというのは、そごうの事例を彷彿とさせます。そごうはその後、西武をスポンサーに迎え、閉鎖した店舗は多数あったものの、ブランドとしては立ち直りました。しかし、NOVAも同様に行くかというと、疑問が残ります。NOVAというブランドは失墜しているし、大量の講師と学生は、資産と言うよりは、債権者であるという重荷にしかならないような気がします。

給与が未払いとなり、かつ失業した講師や、大金を前払いして宙に浮いた学生の債権はどうなるでしょうか。学費返還請求権という債権は一般債権ですし、講師の労働債権は優先債権ですが、いずれにせよ先立つものがなければどうにもなりません。事態をここまで悪化させた代表者に損害賠償を請求し、個人資産を回収したとしても焼け石に水かも知れません。そう考えると、教育産業というものは、破綻すれば砂上の楼閣のような存在とも言えます。

更新情報(取扱い業務)

弁護士紹介取扱い業務を更新しました。

2007年10月24日

「逮捕までするとは」とは(2)

16日の日誌の蛇足です。

本日、例の偽装牛肉コロッケ事件のミートホープ社長が逮捕されたそうですが。

ミートホープの田中社長ら4人逮捕 虚偽表示の疑い

田中社長は、問題発覚後の記者会見で「7、8年前から偽装していた」「毎日やっていたこともある」と認めた。道警による任意の事情聴取でも「自分が指示した」「混ぜればわからないと思った」などと、容疑をほぼ認めていたという。
道警と札幌地検は、引き続き詐欺容疑で立件することに力点を置いている。すでに多くの取引業者について「だまされた」とする調書を作成したほか、一部の業者からは被害届も受理している。さらに捜査を詰め、虚偽表示と詐欺の二つの罪で起訴する考えだ。

詐欺の外形的事実は既に明らかになっているし、被害者の「だまされた」という供述も得ているし、任意の取り調べで自白しているし、何で逮捕する必要があるのでしょうかね。少年調書事件で、朝日新聞が、逮捕の必要性があるのかと批判した根拠は、「任意の事情聴取に対し、容疑を認めていた。地検は「真相解明に必要」と言うが、逃亡の恐れなどはな」い、ということでした。しかし、 少年調書流出事件と違って、朝日新聞は、この事件の逮捕については全く疑問を呈しません。リベラルを自認する大マスコミがこのようなダブルスタンダードな論調では、まだまだ日本の「人質司法」の夜明けは遠いと言わざるを得ません。

2007年10月22日

【私事】ダンゴム

カテゴリのみならず、タイトルにも【】付きで断るほど私事ですが。

昨日会った私の弟が、「デザインフェスタに出展するのでよろしく」と、妙なパンフレットをくれたので、見ると、これでした。

いや、美大の油絵科に行ったはずなのに、途中からパフォーマンス系になってしまって、こんなこともやっていた弟ですが、最近は本業の方が忙しいらしく、大人しくしてるなーと思っていたら、そうでもないようです。しかし、ダンゴムシが主人公って…まあ、「やわらか戦車」がブレイクしちゃう世相ですからね。

私のblogとは、どう考えても客層が重ならない気もしますが、ご紹介まで。

2007年10月18日

非弁提携弁護士案件(2)

昔も説明したような気もしますが、弁護士は、弁護士でない者から、対価を払って事件の紹介・斡旋を受けてはいけませんし、弁護士でない者が、業として弁護士の行う法律業務を行っては行けないことになっています。

弁護士法72条】  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

弁護士法27条】 弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。

「弁護士でない者」=略称「非弁」という業界用語があります。この「非弁」と提携している弁護士が「非弁提携弁護士」です。

具体的には、一番多いのは、弁護士でないのに債務整理を業として行う人たち=「整理屋」と提携してしまった弁護士です。多くの場合、こうした非弁提携弁護士の事務所には弁護士の数に対して、異常に多い数の「事務員」「パラリーガル」が勤務していますが、実はこれは、整理屋集団が、丸ごと法律事務所を乗っ取ってしまうからです。そして、整理屋集団のボス格が、「事務長」などという肩書きで、法律事務所を牛耳ることになります。

こうした非弁提携事務所では、紹介屋からの紹介や、新聞、雑誌広告、NPO法人などを名乗る怪しげな団体などから、大量に債務者の紹介を受け、弁護士の実質的判断を通さず、事務員と名乗る整理屋が、勝手に債務整理を進めます。

なぜか私は、昔から、弁護士会が非弁提携弁護士を摘発したりして、そこに依頼されていた債務者の方の事件が宙に浮くと、その受け皿の一人として弁護士会から事件が降ってくることが多いのですが、2002年以来、久々にこの夏、またこうしたケースがありました。

今回は、非弁提携と目されるT弁護士が急死してしまったことによるもので、5、6件が私のところに回ってきましたが、非弁提携事務所の案件ですので、私の方で、再度取引履歴を取り直すところからやり直し、検証することになります。そうすると、やはり処理がひどいことが見えてきます。

・利息制限法による引き直し計算は、一応やっているが、依頼者からきちんと事情を聞いていないため、業者が取引履歴を一部隠蔽していても、何ら問題にすることなく和解してしまっている。その結果、ほとんど債務ゼロであるはずの事案で、何十万も支払う和解案が勝手に締結されています。

・過払いがある事案で、依頼者に無断で、過払い元本の30~40%の額を譲歩して業者と和解している。これはほとんど業者のいいなりになった結果です(今時、良心的な弁護士は、業者との交渉で、過払い元本を大幅に割り込むような和解はまずしません。裁判を起こせば通常勝てるからです)。

・依頼者が、破産を望んでいるのに、それを無視して「あなたには免責不許可事由があるから破産できない」と偽って、無理な任意整理をさせている。東京地裁であれば、多少の免責不許可事由があっても、少額管財事件という手続きを経ることにより、多くの場合免責が認められるため、破産という選択肢が取れない場合はほとんどありません。

最大の問題は、今回も「預かり金が返ってこない」という問題です。遺族の代理人によると、預かり金の配当率は約半分とか。預かり金であるはずのお金の半分が、整理屋に使い込まれているのです。

2007年10月17日

事業承継シンポジウム

本日は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)の主催する事業承継シンポジウムに、専門家相談員として参加してきました。

日弁連の遺言信託プロジェクトチームの委員に入っている関係で(ただし、最近は多忙でなかなか顔を出せておらず、浦島太郎状態(^^;)、関連のある中小企業PTの委員弁護士とペアを組んで、何組かが専門家相談員として当日、ブースに待機することになっていたものです。

団塊の世代がリタイアの時期を迎えつつある中で、中小企業のオーナー経営者の事業承継の問題もクローズアップされており、中小機構もなかなか力を入れているようです。経営者の側も、関心は高く、当日700人規模の参加があったと聞きました。従って、個別相談の方も大盛況………といけばよいのですが、残念ながら、そこまでは盛り上がらず、相談件数は約20組程度だったようです。私は、運営者側の指示で、「飛び込み相談」に対応せよ、とのことで、本来ペアを組んだはずの相方と引きはがされ、予備ブースで待機していたのですが、ついに予備ブースを利用する状況に至らなかったらしく、一人も相談案件が来ないまま終わってしまいました(おいおい)。

ま、何となく想像は付きます。皆様、一般的関心事としては結構興味があるんだけれど、自分の会社の内情をさらけだして相談するところまでせっぱ詰まっているかというと、そこまでの状況ではない。まだまだ自分一人でなんとかできるように考えている。そんな感じでしょうか。

しかし、弁護士という職業柄、「事業承継」に失敗してしまった紛争にぶち当たることは枚挙にいとまがありません。うまくやっているつもりでも、後継者、がからむと途端におかしくなることはままあります。息子兄弟を天秤にかけて、亡くなる間際まで後継者を明確に定めなかったため、亡くなられた後で、息子兄弟が骨肉の争いを演じる10年戦争になっている例、後継者と定めた子に、亡くなる間際で裏切られ、遺言で全てちゃぶ台をひっくり返そうとしたが、かえって残された遺族の紛争を激化させてしまった例。

もちろん、弁護士ですから、紛争の渦中に入っていって火中の栗を拾うのも仕事です。でも、予め紛争を未然に防ぐことができれば、その方がいいに決まってます。

事業承継のモデルケースなどは、中小機構の資料などにも詳しく載っていますので、繰り返しませんが、理想的には5年、10年かけて行う「計画的」承継です。しかし、物事は何でも計画通りに進むわけではありません。最たるものが、計画途上で、肝心の経営者が不慮の事故や病気で亡くなられてしまうことです。そうなっては意味がないから、計画なんて立てたって絵に描いた餅?でも、計画を立て始めなければ、無事承継できる可能性も、日に日に少なくなっていくわけです。体力や健康、自分の決断力に自身があるうちに、計画を立て始めることが肝要でしょう。

2007年10月16日

「逮捕までするとは」とは

奈良県の放火事件の少年を精神鑑定した医師が、供述調書を漏洩した疑いで奈良地検に逮捕された件ですが、マスコミは、取材源という身内の問題が絡むからか、全般にかなり否定的ですねえ。

朝日は16日付で社説まで書いてます。

少年調書流出―逮捕までするとは

こうしたプライバシーの保護と表現の自由という二つの価値がぶつかりあう問題には、捜査当局は介入すべきではない。奈良地検が医師や筆者の家宅捜索をしたときに、私たちは社説で、そう主張した。

刑事罰を科すようなことになれば、この事件にとどまらず、取材や報道に大きな影響を与えかねない。そうした心配はいまも変わらない。

まして、医師は任意の事情聴取に対し、容疑を認めていた。その間も、勤務先の病院で診療を続けていた。地検は「真相解明に必要」と言うが、逃亡の恐れなどはなく、今回の逮捕だけをとっても、行きすぎだと言わざるをえない。

(中略)

取材源を守れなかったという落ち度があるとはいえ、このまま医師が起訴されていいわけがない。取材協力者もメディアも萎縮(いしゅく)し、報道の自由、ひいては国民の知る権利が脅かされることになりかねないからだ。さらに筆者が「身分なき共犯」で立件されるようなことになれば、その心配はいっそう大きくなる。

ま、調書を引用して出した筆者まで身分なき共犯で立件すべきかどうかは、評価の分かれるところでしょうが、精神鑑定をした医師が秘密漏示罪に当たるのは明らかで、これを立件するなと言うのは、マスコミのエゴでしょう。秘密に当たることでも取材目的での入手なら、取材側は正当行為とされる余地がありますが、取材される側まで正当化されてしまっては、結局守秘義務というものはほとんど意味をなさないことになります。そのようなアンバランスな法解釈はいくら何でも成り立たないでしょう。

さらに私がひっかかるのは、この社説の「医師は任意捜査で容疑を認めているのに、逮捕までするのはどうか」という論調です。

一般論としては大賛成です。しかし、朝日新聞は、他の犯罪の場合も同じように論じているか。犯罪を認めているのに、捜査機関の便宜や、はたまた単なる見せしめ効果を狙ったような逮捕はまだまだ多く、裁判所もそのような逮捕・勾留を無批判に認める状態がまだ続いています。「人質司法」と言われるゆえんです。朝日が他の事件でも同じように必要性に疑問のある逮捕に対して批判の論陣を張っていたならば、一貫性はありますが、自分たちマスコミのお尻に火がついたときだけもっともらしく騒ぐようでは、単なるエゴとしか評価されないでしょう。

2007年10月12日

年金記録確認東京地方第三者委員会

というところに入ることになってしまいました。

言わずと知れた、消えた年金問題の救済審議機関です。

なぜ、私がこんな機関に関わるようになったかというと、例によって会派のつながりの陥穽です。派閥関連のとある用事で、東弁の副会長に電話をしたら、そこで一本釣りになってしまいました。政令か何かで、地方委員会の委員は10人と定められているそうですが、東京で10人ではとても足りない。増やそうにも委員は増やせないため、とりあえず定員のない「専門委員」となるとのこと。ところが、本日初めて出席すると、いきなり渡された書類に「辞任届」の用紙が。なんじゃこりゃ?もうクビ?と訝しんでいたら、委員の数の増加が認められることになったため、近々「専門委員」は辞めて「委員」に再度横滑りしてくださいとのお話でした。朝令暮改もここまで来ると、笑う気にもなれません(^^;

さて、実際に審議してみての感想。個別案件は、当然ながら守秘義務があって言えませんが、事務局側が相当丁寧に事情聴取をして資料をまとめてくれている印象で、まさに委員は「ジャッジ」をする機関という感じです(それでも資料不足で悩む案件は多いですが)。事務局の調査ぶりだけ見ると、個々の国家公務員はやはり優秀なのだな、と思います。その一方で、組織になるとどうしてダメ組織が生まれてしまうのかしら。

2007年10月07日

業対シンポ+延泊

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去る5日より、日弁連の業務対策シンポジウムで、札幌に行ってきました。

昨年の人権大会と同様、このシンポジウムも、どちらかというと日弁連の人事に絡んで集まる方も多い様子。そういう私も、本年度は所属会派の執行部であるということから参加した、というのが正直なところです。

例によって、懇親会→2次会→3次会まで付き合って、翌日からはまたしても家族旅行化。旭山動物園→層雲峡まで行ってきました。

2007年10月01日

更新情報(事務所紹介)

事務所紹介のページを更新しました。

弁護士 豊崎 寿昌

(とよさき としあき)

弁護士 豊崎寿昌

  • 東京弁護士会所属
  • 由岐・豊崎・榎本法律事務所(東京・八丁堀1丁目)パートナー

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