司法支援センター(「法テラス」なんて軽いノリの愛称がついてたりする)に赴任する予定の弁護士に対する待遇が、結構困ったことになりそうです。
まず、弁護士に対する給与は、同期の判事・検事と同レベルであるということです。これだけ聞くともっともなように思えますが、実はいろいろな問題点が潜んでいます。
弁護士というのは、経費がかかります。経費としてもっとも避けられないのが、強制加入団体である弁護士会への入会金・月会費で、けっこう馬鹿にならない費用がかかります。これは、判事・検事には存在しないものです。また、個々の受任事件の処理に当たっては、当然交通費、通信費、会議費、その他諸経費がかかりますが、これらの費用をどこまで国が面倒見るかというと、たぶんほとんど見てはくれない可能性があります。そうした場合、名目額は同じでも、実質的な給与は判事・検事に比べ、大きく見劣りがすることになってしまいます。
また、弁護士過疎地以外の司法支援センターの赴任弁護士は、私選の事件の受任ができないとされています(この趣旨は、一般の弁護士の職域を荒らすことを防ぐためなのでしょう)。しかし、これだと、当番弁護士で回ってきた刑事事件を私選で受任することもできないことになり、かえって事件処理の自由度が低下する可能性があります。
また、司法支援センターに赴任する弁護士は、任期制であり、終身雇用を前提とはしていません。いつかは在野の普通の弁護士として再出発することが予想されていますが、個人事件が一切ダメとなると、その弁護士は何年やっても地盤を全く持てずに任期終了後放り出されることになります。
「公務員なんだから、そんなもの当たり前だろう」という言葉が聞こえてきそうですが、これで司法支援センターにいい人材が集まるでしょうか?
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弁護士過疎地以外の司法支援センターで、所属弁護士が、私選事件を受任したら、公的法律事務所そのものではありませんか?官から民へのかけ声の下、地方の郵便局が無くなっていくのに、法律事務所が溢れている都会に国が法律事務所を作る必要性はないはずです。過疎地以外の司法支援センターは、取り次ぎ役に徹するべきだし、取り次ぎ役にとどまるからこそ、国の関与が許されるのだと思います。もちろん、取り次ぎ役に徹すると、その必要性に疑問が出てくるのは確かですが。
投稿者 井浦 : 2006年03月10日 03:20
例えば東京区部ではおっしゃるとおりかも知れませんが、地方都市では必ずしも「弁護士が溢れている」訳ではないように思います。弁護士が溢れている地域は、取り次ぎ役に徹し、専従弁護士は不要というご意見は私も尤もだと思います。
ただ、私の意見は、司法支援センターに「必要とされる良い人材が確保できるか」という観点から問題提起しているわけで、ここらへんが本来在野で独立している弁護士を公職で起用する場合の共通のジレンマなのですが………
投稿者 豊崎寿昌 : 2006年03月10日 18:11