本日は、東京弁護士会の公聴会でした。
何の?日弁連会長選挙はとっくに終わってます。本日は東弁選出の「日弁連理事」候補の所信表明と質疑応答が行われる公聴会でした。
日弁連理事とは、簡単に言うと「日弁連村」の「村議会議員」です。多くは、各地の弁護士会の会長が日弁連理事を兼ねて(ある意味地域代表ですね)しますが、東京に関しては、東京三会の会長はたいてい日弁連の副会長を兼ねますので、理事には別の人材が充てられます。
で、私の所属する派閥の法友会では、毎年東京弁護士会の会長・副会長候補を擁立するとともに、日弁連理事も3名程度擁立します。ちなみに東弁に割り当てられる日弁連理事は7名とのことです。この3名の理事のうち1名分が、法友会の中の若手集団である、「法友全期会」が推薦して擁立することになっています。
何で、こんなことを長々と書いているかと言いますと、実は私が本年度の法友全期会推薦の理事候補者にされちゃったからです。昨年末からいろいろと口説かれて、ついに陥落してしまいました。私も忙しいのに………
というわけで、本日の私の所信表明の内容です。原稿を読むだけとはいえ、いやー緊張しました。
- 48期の豊崎寿昌です。
今回、昨年末より、所属する会派の複数の先輩方から、日弁連理事への立候補についてお勧めのお話をいただきました。私の知る限り、近年、東京弁護士会から選出された日弁連理事の方々は、いずれも東弁、日弁連において多大な活躍をされている先輩方であり、私が到底及ぶところではないこと、また私は現時点で弁護士経験がまだ10年間に満たない若輩であることから、到底日弁連理事のような重責に堪えられるものではないと思い、固辞しておりましたが、その後も重ねて強力な説得を受け、若輩ではありますが、立候補させていただこうと考えるに至りました。- 私が司法試験に合格したのは、いわゆる丙案の実施に向けて、カウントダウンが始まった年です。受験生から見れば、このころから始まる法曹養成制度の改革というのは、一寸先が全く見えない制度変更であり、受験生を置き去りにして行われる議論に当時非常に強い不満を覚えました。そのため、弁護士登録後に最初に参加したプロボノ活動というのは、芳賀先生が主催する意見表明の会の択一試験会場でのビラまきでした。
これが縁となって、その後、東弁の司法試験・法曹養成制度改革対策本部、後に法曹養成センターの委員を務めさせていただいております。
私はどちらかというと、大上段に振りかぶって、理念論を語るよりは、現場を体験し、現場の状況に基づいた現実的な議論を行う性分ですので、会務活動においても、ややもすれば観念的な議論よりも、現に修習期間が短縮されてしまう合格者に対する事前研修や、最近では法務研究財団による法科大学院へのトライアル評価の評価員など、微力ながら実際に目の前にある課題に対する行動面を担当してきたつもりです。修習委員会に所属し、修習幹事を6年間担当したことも同じ問題意識からでした。- また、これは当初は所属会派の活動でしたが、中学・高校への出前模擬裁判の活動に大変興味を持ち、その後この活動が東弁の広報委員会を経て、現在法教育センター運営委員会の活動になるに至るまで、何人かの同世代の弁護士とともに継続的に担当しております。私自身は、まだ法教育という言葉すらない時代に、弁護士という社会的存在を中高生の段階から認知してもらうという趣旨で活動を行ってきたものですが、図らずもその後の司法改革の流れの中で、法教育の重要性が大きくクローズアップされるに至りました。いずれにせよ、弁護士が市民の目線で社会に飛び込んでいくこのような経験は、現在の私の有り様を培ったものと考えております。
- さて、現在に至る司法改革について、とりわけ若手世代から見て、「2割司法」といわれる小さい司法、官僚司法の現状を打破し、市民にとって利用しやすい大きな司法をつくるという理念自体について、反対をする者は少数ではないかと思います。しかしながら、一方で、実際に進んでいる各種制度改革や新しい運用の現状については、光の部分と影の部分が交錯し、改革が成功したと評価できるまでには、まだまだ我々の不断の努力が必要です。
その一方で、こうした大きな司法は、法曹人口の増加という前提は避けられず、弁護士間の競争の激化という我が身の犠牲の覚悟が伴うものであり、その犠牲を引き受けていくのは、若手やこれから登録していく世代です。だからといって、弁護士の経済的地位の確保のために改革を逆行させるのは本末転倒です。必要なのは、弁護士が、我が身を犠牲にしてもすすめるべき改革の本質とその必要性について、若手世代も含めて全会員が相互に理解を深めることではないかと考えます。- 私は現在までの弁護士経験の中で、経験の浅い若手に対し、年長会員が、先輩としての優しさをもって、大変親身に接するとともに、対等な立場での議論をさせてくれる点は弁護士会の誇るべき美風であると感じております。
しかしながら、今回の日弁連会長選挙でも若手会員に対する業務対策が重要政策としてクローズアップされたように、法曹人口が爆発的に増加することが予想される現在、特に業務基盤の不安定な若手会員と、従来の会員との間の世代間の意識のギャップが大きくなりかねない時期にさしかかっております。ここで舵取りを誤った場合、日弁連は世代間の意識のギャップから、闊達な意見交換の前提が失われ、求心力を失うおそれすらあると考えます。
私が日弁連理事に選任された場合、このような認識に基づき、東京弁護士会の代表としてのみならず、微力ながら若手会員の声を代弁し、一方で日弁連の諸課題につき、若手会員に適宜フィードバックし、議論を深める観点から活動していきたいと考えております。
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