私はリアルタイムで全部見ていたわけではないですが、姉歯元建築士への証人喚問で、自民党渡辺具能議員の質問はひどかったですね。
まあ万年与党議員というのは、普段から緊張感を持って国会質問に立つことなどない(シャンシャン質問で許される)ので、質問する技術が磨かれる機会はないでしょうが、それにしても、よりによってあそこまでひどいお方をわざわざ選んで出さなくても。自民党は総選挙で相当新世代に議員を入れ替えたはずなのですが、こういうときには古い体質そのままですね。
この、証人に質問する技術というものは、やはり修練が必要なもので、いきなりやってもほとんどの方はうまくいきません(希に天性の冴えを見せる方もいますが)。だいたいは、聞きたいことを自分で言ってしまって質問にならないか(今回の渡辺議員がまさにこのパターン)、逆にスマートに行こうとして、ちょっと証人に逃げられるとどう突っ込んでいいかわからず、そこで頓挫してしまうパターンです。
反対尋問での技術というのは、弁護士にとっては永遠のテーマとも言うべきものですが、ある程度の鉄則があります。第一に、答えの予測できない質問はしないこと。言い訳をされて、さらに突っ込める質問が用意できていない場合は質問しないことです。第二に、突っ込める材料があるときには、周到に周辺の前提質問を重ね、証人の外堀を埋め、証人自身が逃げられないようにしてから肝心の質問に踏み込むことです。
小説の中ですが、これが最も鮮やかに体現されているのは、私の知る中では、スコット・トゥローの「推定無罪」の中で出てくるサンディ・スターン弁護人のドクター・クマガイに対する反対尋問です。
ま、これが口ほどにできれば弁護士として苦労はしないのですが、しかしながら証人尋問というのは弁護士の腕の見せ所ですから、尋問の機会が巡ってくるたびに、私としては、スターンのように鮮やかにやってやる道はないものか………と頭をひねって下準備をするわけです。
ですから、時々、自分の側の証人に対する主尋問すら準備不足で、主尋問の段階から崩れているような尋問を見ると、相手方代理人に対して我がことのように腹が立ったりします(実際問題、苦労して用意した反対尋問の前提がなくなるので困る)。
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