広島の小学生殺害事件で、被疑者が逮捕されてからすぐに弁護人が数人ついていますが、これは広島弁護士会が会の責任で派遣した弁護士で、同弁護士会の刑事弁護委員だそうです。いわば、現地における刑事弁護のエースです。
しかし、今回の一連の過程における弁護人のマスコミに向けての対応には、残念ながらやや首をかしげざるを得ません。とりわけ、何で被疑者の自白内容を逐一マスコミに向けて発表する必要があったのか?おかげで変転する被疑者の供述が全部報道され、被疑者の社会内での心証は最悪の結果でしょう。
社会の耳目を引くような事件ですと、接見を終えた弁護人にもマスコミが群がり、「国民の知る権利のため」などと言って接見内容を聞き出そうとしつこく迫ってきます。しかし、刑事弁護人の役割は、国民の知る権利に奉仕することなどではありません。被疑者の利益を守ることがあくまで第一です。被疑者の利益を守ることは、単なる私益を擁護することではなく、長期的に見れば弁護人への信頼を守り、刑事司法制度を片側で守ることにつながっているわけです。
実際、今回の弁護人の対応は、業界内でも結構物議を醸していて、「刑事弁護委員である弁護人がマスコミに話すくらいだから、何か深遠な意義があるに違いない」と、擁護する方もいます。しかし、何を狙ったかは別として、残念ながら現在のところ、完全に裏目に出ているような気がしてなりません。
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