本年10月に司法修習を終えた新人弁護士のうち、東京の3つの弁護士会へ入会した者の数は、東京弁護士会(以下「東弁」)が195、第一東京弁護士会(以下「一弁」)が171、第二東京弁護士会(以下「二弁」)が151だそうです。
東京三会の会員数は、伝統的にほぼ2:1:1の割合でしたが、最近は東弁と一弁・二弁で新入会員の数があまり変わらず、総会員数の比率も接近する傾向にあり、本年春の時点では、総会員数が順に約4700、2800、2900といった感じでした。今回の新入会員数も、三会でかなり接近しており、新入会員受け入れ後の総会員数は、約4900、3000、
3100という感じになるわけです。
東京のように、一地域に複数の弁護士会がある場合、新人が主体的に所属弁護士会を選ぶことはほとんどなく、要するに最初に就職する事務所のボスがどこの弁護士会であるかという点に、新人の入会先は左右されます。従って、人数で少な一弁・二弁に比較的新入会員が多いのは、一弁・二弁の事務所が東弁に比較して、採用意欲が強いことを示しています。
それはなぜか。伝統的に、東弁は小規模な事務所が多いのですが、最近は大規模事務所のさらなる拡大志向が強まっており、一時期の自動車メーカーの合併ブームのように、事務所同士の合併による数的優位の確保を狙う事務所が多い情勢にあります。従って、もともと大規模事務所の多い一弁・二弁に新人採用が増えるわけです。
このように、東弁の数的優位が徐々に弱まっていることを背景とするのか、今度の日弁連会長選(来年2月)については、東弁が二期ぶりに候補者を出すのに対し、二弁が正面から候補をぶつけて来るというガチンコ勝負の情勢にあるようです。もはや東弁にも往年の圧倒的強さはない………ということでしょうか。
おまけに、東弁の候補は、いわゆる伝統的な弁護士像を体現したかのような方ですが、二弁の候補は、マスコミ等でもかなり有名な企業法務の大家という感じの方です。そして、この方、伝統的な戦術では東弁に勝てないと思っているのか、水面下で聞こえてくる公約が結構すごい。
たとえば「司法試験3000人合格時代の若手の業務対策のため、日本に懲罰的損害賠償制度の導入を目指す」とか。
懲罰的損害賠償制度とは、かなりアバウトな説明をしてしまえば、民事上の損害賠償にペナルティ的意味を持たせ、見せしめのために実損害以上の賠償を命じる制度です。アメリカで、よく大企業が天文学的な損害賠償を命じられているのはこの制度によります。
しかし、選挙政策とはいえ、弁護士の都合でこんな制度を導入することを唱えていいんですかね?うーむ、でもかなり目を引くインパクトのある議論であることは否定しません。
これに対し、我が東弁の候補は、政策という点では現実的というか、あまりインパクトのあるものは打ち出せていない嫌いがあります。おまけに、本日は、東弁の最大派閥である法友会の若手組織(よく出てくる法友全期会のこと)の新入会員歓迎会で、新人に東弁候補の顔を売る絶好のチャンスだったのですが、露払いに出てこられた選対本部長の演説がかなり前時代的で、正直若手弁護士の意識とは相当落差があったのが気がかりですねえ。