弁護士 豊崎寿昌

3616571

2005年10月

2005年10月31日

司法のしゃべらなすぎ

「司法のしゃべりすぎ」の判事「判決短すぎ」減点評価
結論と無関係な記述は判決文から省くべきだと主張する「司法のしゃべりすぎ」の著書で知られる横浜地裁の井上薫判事(50)が、上司から「判決理由が短すぎる」とのマイナス評価を受け、「裁判官の独立を侵害された」とする不服申立書を同地裁に提出していたことが30日、分かった。
今年12月に最高裁の諮問委員会が、来春に任期切れとなる井上判事の再任の可否を判断する予定で、審議の行方が注目される。

井上判事の持論は、実は最高裁が憲法判断で多用してきた論法で、10月25日の日誌で述べた司法消極主義の流れに連なる考えが反映されています。

判決の結論に関係のない論評は、司法権という権力の無責任な言論になりがちであり、いちがいにこの持論を否定はできないでしょう。しかし、井上判事が完全に忘れていることが一つあります。お客さん=訴訟当事者のことです。

裁判というものは、法治国家にとっては私的紛争の最終的な解決の場として国家権力が提供するものですから、その結論がいかなるものであれ、訴訟当事者が納得しなければ、最終的に制度としての信頼が得られず、機能しません。判決文には、負けた当事者であっても納得せざるを得ないような説得技術が必要なはずです。

しかし、現実には、この「当事者の説得」という観点を忘れた独りよがりな判決文が非常に多いのが実情です。井上判事の考え方も、論理的には正しいかも知れませんが、裁判の本来の機能を置き去りにした観があり、訴訟当事者の不満が多いのもうなずける話です。

いろいろな考え方を持つ多様な裁判官が存在すること自体は健全なことですが、お客さんのことを顧みない裁判官はいらないでしょうね。

2005年10月26日

法曹関係事件あれこれ

その1

裁判官遅刻、開廷遅れる 公判期日忘れ
25日、京都地裁舞鶴支部で行われた強盗殺人事件の初公判で、裁判官1人が開廷時間に遅刻、公判開始が予定の午前10時半から約45分遅れた。

地方の裁判所支部は、裁判官が週1回しか来ない支部もあります(本庁や別な支部の裁判官が兼任するわけです)。

しかし、この運用は、要するに裁判官の来ない日は書記官と事務官しかいない裁判所の存在を前提にするわけで、かなり問題があるのではないかと思っています。結局週1回しか裁判が開けず、こういう支部の裁判は遅延しがちです。

おまけにこんな事件みたいな弊害も起こるわけですね。

弁護士会が弁護士の偏在問題に取り組む現在、裁判所も裁判官の偏在問題に少しは取り組んだらどうでしょうかね。

その2

財産没収逃れ指南、弁護士を逮捕…詐欺破産事件
破産宣告を受けた元不動産業者らによる資産隠し事件で、東京地検特捜部は26日、破産法違反(詐欺破産)容疑で逮捕された元不動産業・覚張初江容疑者(76)らに、財産の没収を逃れるための手口を指南したとして、東京弁護士会所属の弁護士・山下進容疑者(58)を同法違反の疑いで逮捕した。

まだ逮捕段階ですので何とも言えませんが、オウム弁護人の弁護士の方の場合と比べ、破産者本人自体が詐欺破産罪容疑で立件されていることから、けっこう容疑は濃厚なのですかね。

この引用元の記事に、同弁護士が1998年10月に懲戒処分を受けているとの記載があったので、ちょっと調べてみましたら、賃借物件の立ち退き料交渉(訴訟)を巡って過大な報酬を請求した件でした。あんまり弁護士としては起こしたくないトラブルですが、本件と直接の関連はありませんので、何とも言えません。が、やはり弁護士として債務整理の場合にどこまでのことが許されるかについては、非常に慎重な
判断を要することは確かです。

2005年10月25日

司法積極主義/消極主義

台湾の元患者の請求認める、韓国は棄却・ハンセン病訴訟
日本の植民地時代に開設された韓国・小鹿島(ソロクト)更生園と台湾・楽生院の両ハンセン病療養所の入所者や遺族計142人が、ハンセン病補償法に基づく補償請求を厚生労働相が棄却したのは違法として、処分取り消しを求めた二つの訴訟の判決が25日、東京地裁であった。同地裁は、台湾の入所者らの請求を認めて決定を取り消した。一方、韓国の入所者らの請求は棄却した。

日経新聞夕刊の解説文では、地裁の別々の民事部が下した結論が逆の判決に対し、患者側勝訴の台湾判決は「立法趣旨を重視」し、国側勝訴の韓国判決は「法案審議の経過を細かく分析」したものと分析し、韓国判決について「裁判官が違う以上、判決内容が変わるのは、ある意味で司法の健全性を示している」としながらも、「判決が国会審議にこだわる必要があったのか、やや疑問も残る」と論評しています。

しかし、私は、この二つの判決の根っこには、裁判所に流れる「司法積極主義」と「司法消極主義」の二つの考え方が端的に表れたものだと思います。

この二つの考え方は、裁判所が違憲判断を積極的にするかという場面でよく対立します。司法積極主義は、立法の欠陥や不作為に対し、裁判所に与えられた違憲審査権を積極的に行使して不正義をただしていこうという考え方です。他方、消極主義は、国民の投票によって選ばれたわけではない司法権が、立法権に対しあまり干渉しすぎるのは民主主義の原則に反するという考えの下、違憲審査権の行使をできるだけ避けようという考え方です。

戦後の日本の裁判所は基本的に司法消極主義でした。ですから、今回の韓国訴訟の判決を担当した裁判体は、実はこの司法消極主義という発想が先にあって、国会審議の経過云々というのは、後からそれを正当化するために持ちだしただけの理屈のような気がします。

しかし、ハンセン病患者に対する施策については、2001年5月に熊本地裁で、立法の不作為を違憲と断じた判決が出されたことが、今回の立法のきっかけになっており、要はあまりの不正義状態に、司法権が重い腰を上げて「積極主義」に打って出たことにより、事態が打開されてきたという側面があります。そうした司法の役割に対し、今回の韓国訴訟担当の裁判官たちがどこまで自覚していたのか、私はかなり疑問です。

2005年10月24日

調停委員と国籍

調停委員に国籍の壁、在日弁護士を拒否 最高裁運用
離婚などのトラブルで仲裁役を務める裁判所の調停委員には、たとえ弁護士でも日本国籍がない人はなれない――最高裁が実務上、こんな運用をしていることがわかった。法律にも規則にも国籍に関する明文の規定はないが、見えない国籍条項を設けている格好だ。

調停委員の作成した調停調書は確定判決と同様強制力がある、ということ等から、公権力の行使に携わる公務員になるには「当然の法理として」日本国籍が必要という最高裁の姿勢にも一理ありますが、解せないのは、在日韓国人弁護士を調停委員に推薦した兵庫県弁護士会に対し「推薦を取り下げて欲しい」と要請するという中途半端な態度です。

本当にそう思っているなら、堂々と推薦を無視して任命しなけりゃいいわけで、弁護士会側に取り下げさせようという姑息な行政指導が、最高裁のへんてこな体質を表しているような気がしてなりません。

まあ外国人の公務員就任については、私自身は、普通の外国人と、歴史的背景のある在日韓国・朝鮮人は同列に扱えないのではないかと思っていますが、なんだかよくわからない話です。

更新情報(弁護士の課外活動)

弁護士の課外活動(別サイト)に、「モンゴル旅行記(その3)」をアップしました。

2005年10月23日

更新情報(弁護士の課外活動)

弁護士の課外活動(別サイト)に、「モンゴル旅行記(その2)」をアップしました。

2005年10月20日

W-ZERO3

初代Cassiopeia以来のキーボード付きPDA使いの私としては、SONYがCRIEから撤退した後は、選択肢がなくなって困り果てていたのですが、ひょっとして光明が??

ウィルコム、Windows Mobile搭載のW-SIM対応端末「W-ZERO3」

いわゆるPDA付きモバイルフォン=スマートフォンなのですが、何と言ってもキーボード付き!

開発がシャープなのが、ザウルスで懲りた私としては、不安ですが、まあWindowsMobileなので、Outlookとの連携は一応期待していいでしょうか。ちょっと発売が待ち遠しいかも。

2005年10月19日

更新情報(弁護士の課外活動)

弁護士の課外活動(別サイト)の、「ThinkPad Personal Load Test」を加筆しました。

2005年10月16日

就職説明会

本日は、東京三弁護士会の、修習生向け就職説明会に参加して、ブースを構えてきました。

要するに、東京の事務所での就職を希望する修習生向けに、東京の法律事務所が集団でブースを構えて受付するわけです。私が修習生だった頃には影も形もなかったこの説明会、年々システマチックになっているようで、今回はついに三会合同になりました。

ちなみにうちの事務所は2年前にも参加したのですが、その際には一日ブースに座っていて、合計5人くらいしか修習生が来ず、まあうちみたいな小さな事務所はこんなもんだろうと考えていましたが、そのつもりで今回も臨んだら、とんでもありませんでした。

あらかじめプログラムが組まれていて、25分ごとに希望する修習生への説明を終えなければならないのですが、来るは来るは、合計40人近くの修習生が来ました。おかげで十分に用意したつもりの事務所案内はあっという間に売り切れ、最後は自分の名刺さえ品切れの始末。

これは我が事務所の知名度がアップした賜物………ではなくて、どう考えても修習生の就職環境が悪くなっているからでしょう。2年前は修習生は1000名、今年は1500名です。たぶん、最終的に就職できない修習生はまだいないでしょうが、競争が相当厳しいことは事実です。

競争自体は別段悪いわけではないですが、心配なのは、焦っておかしな事務所に就職してしまうことです。事件処理のやり方がおかしな(要は同業者から見て?な)事務所を最初に体験してしまうと、まともな感覚を身につけないままに弁護士人生をスタートさせてしまい、一生を狂わせかねない危険があります。そして、そのような弁護士に依頼して、おかしな事件処理をされる依頼者の方にも迷惑が及んでしまいます。願わくは、弁護士としての最初の数年間に正しい方向性を身につけられる環境を得て欲しいものです。

なんて、他人事のように言ってしまいましたが、我が事務所も誰を採用するのか、これから悩まなきゃ。

2005年10月11日

気がついたら11,000アクセス(新サイト)

このところ、また多忙&週末からウイルス性胃腸炎で寝込んで更新が途絶えていましたが、本日久々に我がサイトをチェックしてびっくり。

先週半ばまで9000台だったアクセスが、数日見ないうちに1万どころか1万1000台になってます。
理由として考えられるのは一つしかありません。岡口裁判官のサイトにリンクしていただいたことでしょう。

岡口裁判官、おそるべし。というか、ありがたや。

というわけで、1万を突破した日が特定できず。たぶん10月8日頃でしょうが。

2005年10月05日

Z60

久々にPC関係の話題です。

ThinkPadがLenovo傘下になってから初めてのニューモデル「Z60」が発表されました。が、かなりがっくりする内容でした(;;)

ワイド液晶は時代の流れですからまあ歓迎するとしましょう。チタンカバーも、かつてのiシリーズと同じく思いつきですぐに消えていくような気がしますが、これもまあいいでしょう。

問題は、過去の財産をそこまで捨てていいのか、という点です。

ThinkPad使いというのは、結構何台にもわたってThinkPadを持っていて、オプション等も使い回ししていることが多いのです。IBMも、それを意識したのかどうか(というよりは、企業向けの一括納入作戦の一環でしょうが)シリーズ全体での互換性に意識を配ってきました。特に2000年に登場したA、T、X(のちにRも)各シリーズは、同じ脱着式ドライブ(ウルトラベイ)、同じポトリ、ドッキングステーションが使い回せるという非常に優れた設計でした。そしてこれが5年も続いてきたのです。

しかし、Zシリーズは、これをほとんどどぶに捨ててしまいました。ドッキングステーション用のコネクタは、既にG40、R50eシリーズ等でコネクタ自体が廃止されたり、X40では独自コネクタになったりしていましたが、また新たな独自コネクタになってしまい、従来のドッキングステーションはおろかX40との互換性もなしだそうです。さらに、もう10年程度は互換性があったACアダプタ(私なんか、時たま最新のT42に、9年前の560用のアダプタをつないで使ってます)の互換性すら捨ててしまったことは何とも残念。Windowsキーをつけない、というのも一つのポリシーだったはずですが、あっさり装備されて、ますますキーボード最下段がごちゃごちゃする弊害がでてしまいました。

Lenovoになって、新しい特色を出したい思いはわかりますが、今後どうなることやら、という不安を感じさせる新製品という印象です。

弁護士 豊崎 寿昌

(とよさき としあき)

弁護士 豊崎寿昌

  • 東京弁護士会所属
  • 由岐・豊崎・榎本法律事務所(東京・八丁堀1丁目)パートナー

Copyright © 2001-2005 由岐・豊崎・榎本法律事務所 弁護士 豊崎寿昌 All Rights Reserved. Powered by Movable Type