とある事件で、労働法の論点と、一般民事法の論点が絡まってしまっている事件があります。
当方が一般民事事件として提訴し、相手方が別訴で当方を労働事件として訴えましたが、実際には主張の内容は表裏のような関係で、事件としての争点は共通、どうみても併合して同時に審理を進めていく方が合理的な事件でした。相手方代理人も、その点の見解は共通で、お互いが併合審理を望んでいたわけです。
最初に第1回期日が入った一般民事部での事件の方では、裁判官が「労働部の事件の方に併合してもらうのが適切でしょう」と、次回期日も決めず、併合は確実だという調子で期日終了。
ところが、その直後にあった、労働部の事件の方では、裁判官が「うーん、労働法上の論点がどこまであるかによりますねえ」と、歯切れが悪く、「論点によっては労働部でやる意味がないですから、一般民事部に併合してもらう方がいいかも………」という調子です。
いや、当事者にとってはどっちでもいいんです。併合して審理をさっさと進めてもらえれば。どっちでもいいから早く決めてください。そうお願いしたのですが、結局この裁判官、「主張を見ないとわからない」と言って、本日の第2回期日まで、1ヶ月近く判断を先送りし、本日ようやく、「当部に併合する方向で考えましょうか」という話になりました。
まあ、慎重なのが一概に悪いとはもうしませんが、「一般民事部」「労働部」ってのは、結局は東京地裁の内部の事務分配の次元の話であって、法律上はどっちもただの民事部です。なんか、利用者たる我々から見てると、お役所のセクト主義にたらい回しされて1ヶ月経ったような気がしてなりませんねえ。
報道によると、宮城県貸金業協会が、法定の上限金利を引き上げ、回収不能になるリスクが大き
い客にも資金を貸し出せるようにする「ヤミ金融回避特区」に
宮城県を指定するよう提案したそうで。
まあ、もともと「特区」は、我田引水的な提案もたくさんありますが、これはその中でもひどい。
貸金業法の上限金利が引き下げられたことが、ヤミ金を生んだかのように喧伝されることがよくありますが、ヤミ金の跳梁跋扈は、暴力団の暗躍と、携帯電話の普及(090金融)の方が原因でしょう。もちろん、上限金利の引き下げに伴い廃業に追い込まれた中小サラ金も多いのですが、率直に言えば、そういう中小サラ金の貸し付け、取り立ては、ヤミ金と同レベルとは行かないまでも、かなり怪しげです。
そうした「中小サラ金」の保護のための「特区」に「ヤミ金融回避」なんて名前を付けるってのは、かなり詐欺っぽいネーミングですねえ。まあ提案が実現するとは到底思えませんが。
本日は土曜日ですが、またしても法律相談の当番で北千住の相談センターへ。どうも法律相談の当番は、重なるときは重なる傾向があります。
それはそうと、帰り際になぜかセンターの事務局にとっつかまって、「先生、これって一般相談で受け付けるべきなんでしょうか、それともクレサラ相談として受け付けるべきなんでしょうか」という質問を受けました。なんか、相談の申し込みの配点を巡って悩んでいるそうです。
別に、「弁護士としてはどちらの相談でも中身は一緒だから、どちらでもいいんじゃないですかあ?」と答えたんですが、いや、相談者にとっては、一般相談だと30分5250円、クレサラだと30分2100円なので、大違いなんです、というご返答。
そうなんです。かつてはクレサラ相談も30分5250円だったのですが、ここのところ、弁護士会の法律相談センターでのクレサラ相談の件数が激減したことに対する対策として、クレサラ相談の相談料をダンピングしたのです。
そのダンピングの原始をどうやって捻出したのかと言えば、我々弁護士の相談担当の日当です。クレサラ相談に関しては、日当がなくなってしまいました。要は、相談を受けた事件の受任がなければただ働きです。
まあ、もともとたいした日当でもなく、それを目当てに相談を担当している訳じゃありませんから廃止されたところでそれほど気にはなりませんが、料金を闇雲にダンピングしても、こんな弊害もあるということで。
かなり前ですが、受任した事件の相手方の法律相談が配点されてしまった件を書きましたが、またしても似たような事件が起こってしまいました。
今回も法律相談の当番だったのですが、とある相続がらみの相談客の相談を受けまして、話を聞いている最中に、何となく既視感が??
しかし、そのときは明確に思い出せず、頼まれるままに名刺を渡し、一応事務所に継続相談に来てもらうことにして、事務所に帰りましたが、やはりどうしても気に掛かり、念のために過去の法律相談カードの控えをひっくり返してみました。すると………何と、やはり半年前に、同じ事件の相手方から相談を受けていたことが判明です。あわててお詫びとお断りの電話をかけることになったことは言うまでもありません(相手方の相談を一度でも受けてしまうと、もう弁護士倫理上依頼を受けられません)。
それにしても、「天文学的確率」なんて言ってますが、どうして東京でこんなことが2度も起こるんでしょうかね。
本日朝、9時45分から、とある過払い返還訴訟事件の弁論準備期日でした。
普通から言うと、この時間帯に裁判所が期日を入れることはありません(普通は10時以降)。それなのに、なぜこんな時間に期日があったかというと、ひとえに相手方代理人の都合です。
この代理人、この被告の事件のかなりの部分を一手に引き受けているようなのですが、そのためあまりにも手持ち事件数が多く、全く次回期日の予定が入らないのです。ですから、苦肉の策で、午前11時55分に期日を入れたり、午後4時55分に期日を入れたりする羽目になります(実際に始まるのは、それぞれ12時半だったり5時過ぎだったり)。
今回も、この代理人の都合に合わせ、無理矢理9時45分という時間に入れたわけですが、裁判所で待てど暮らせど、この代理人はやってきません。そのうち10時を回ってしまいました。どうやら多忙の余り、お忘れになられたようです。
多忙なのは弁護士の常ですが、だからといって自分の首が回らないほど事件を引き受けてしまうと、このようなことになり、かえって弁護士としての信用をなくすのではないかなあ、と老婆心ながら思いますがね。
連日、模擬裁判ネタですが。
【模擬裁判員、判決出せず】東京地裁、地検、弁護士会が協力し東京高裁で開いた裁判員制度の模擬法廷は二十日午後、裁判員と裁判官が被告の刑事責任について評議した。しかし、主催者が予定していた三時間以内にまとまらず、判決を出せずに閉廷した。
否定的な報道もあったようですが、シナリオ通りにしゃんしゃんと評決が出なかったこと自体が、裁判員が真剣に議論したことの証であって、いいことではないでしょうか。拙速な裁判よりはよっぽどいいです。
それにしても、この模擬裁判員裁判、裏話があって、当初の打ち合わせでは検察も弁護も、シナリオを棒読みする予定だったのが、検察が冒頭陳述に大幅に手を入れることが発覚したため、弁護側も対抗して裁判所とやり合い、プロジェクターのプレゼンにまで発展したとか。模擬裁判だってここまで熱くなるのですから、実際に始まったらもっと熱い戦いになることは確実です。
本日は、4月6日の日誌で紹介した、法科大学院での民事模擬裁判の講座でのハイライト、尋問期日でした。
午後1時から始まり、午後5時過ぎまで、集中証人尋問が行われましたが、異議が出るたびに、裁判所が「合議します」といって、別室にこもり、長考に入ってしまう(実務ではこんなことはないでしょう………)ので、正味はもう少し短かったです。
しかし、最初は危なっかしく、見ていてハラハラ、イライラした尋問ですが、途中で講評したことが効いたのか、尻上がりによくなり、終盤は弁護士としても感心するほど完成度の高い尋問となりました。短時間のうちに上達するという点では、司法修習生も及ばないほどで、学生のポテンシャルには頭が下がります。
昨年4月3日の日誌に書いた日弁連の知的財産法研修ですが、その後、第2段階の研修として、法務研究財団が企画する連続研修に参加しています。
この研修、昨年のようなマスプロ講演形式の座学とは異なり、かなり本格的なゼミ形式の授業で、第1回は5月28日に行われ、第2回が本日午前10時30分より、午後4時30分まで、みっちり3コマ行われました。
内容も、一コマ目は前回の宿題である起案の講評、二コマ目は今回の課題についての模擬ロイヤリング(事情聴取・打ち合わせ)、三コマ目がその講評で、宿題にまた課題についての起案があります。
模擬ロイヤリングでは、毎回4人程度が指名されて、模擬弁護士役を演じ、相談者を演じる講師に対し、会場の注目を浴びながら、冷や汗をかきつつ事情聴取をするということをやらされます。今回は私がその一人に指名され、拙い事情聴取をして参りました。
いやはや、こんなことをするのは司法研修所以来で、非常に緊張します。しかしながら、同じ課題を前にしても、同じ弁護士同士がここまで考え方や、事件の処理方針、スタンスが異なるものだなあと、改めて感じ入ります。
またまた日誌の更新が滞ってしまいました。5月30日の日誌を書きかけてから、アップしたのが本日。間14日分、後で穴埋めできますかどうか(できた場合は間に突っ込みますが)。
さて、途中を抜いて本日の話題を二つ。
O.J.シンプソン事件の時もそうでしたが、微妙な事件で無罪評決が出ると、日本のマスコミはすぐに「弁護団の戦術の勝利」にしたがりますね。確かにそういう側面も否定しませんが、被告人の供述よりも客観的証拠と第三者の証言の信用性を中心に、法廷で検察と弁護人ががっぷり四つに組んで戦えるアメリカの刑事裁判システムは、やはり自白偏重、調書偏重の日本よりも健全な気がします。
いわゆる将来利息の算定で、低金利のご時世に民法所定の5%でいいかどうかの論点です。過去の日誌にも書いたのですが、やはり現在低金利だからといって、未来永劫この状態が続くかどうかわからない以上、立法による対処によるべき問題に思えます。
Yahoo!JAPANのサイトを真似て作ったフィッシングサイトの開設者が逮捕されたとのことですが、疑問なのは、なぜ「著作権法違反」容疑なのかと言う点。
第一に、そもそもフィッシングサイトの問題点は、詐欺的に個人情報を取得する点でしょう。しかし、現在の刑法では「情報」の窃取あるいは詐取を罰する法律がありません。個人情報保護法等の制定時に、どうしてこのような犯罪を罰する規定を加えていないのか、立法の不備に疑問が生ずるところです。
従って、別な犯罪にかこつけて何とか立件せざるを得ないという捜査機関の苦渋は理解できますが、うーん、それにしても、「著作権」ですかね?
Yahoo!のロゴで著作権というのは、ちょっと極端のような気もしますし、トップページのデザインなら、かのlivedoorもそっくりさんです。個人的感覚としては、不正競争防止法違反あたりの方がまだしっくりくるんですが………
昨日から司法修習生の弁護修習の見学旅行につきあって一泊してきました。
見学旅行先は、機会によってまちまちで、とってつけたような見学先になってしまうこともあるのですが、今回はねむの木学園に見学に行きました。
有名な肢体不自由児が中心に生活する福祉・教育施設ですが、ダンスのレッスンの現場をみせてもらったりしまして、短い時間でしたが結構私でも感じる部分がありましたので、見学先としてはかなり意義のあるところだったと思います。
夜は焼津のホテルに泊まり、毎度のことながら深夜まで修習生と酒を酌み交わしながら語り合いました。こういう機会がないと、本音の話はできません。法科大学院を前提とする新司法修習では、実務修習期間が短くなり、こうした機会もなくなってしまうようですが、淋しいものです。
更生会社への過払い利息請求認めず:最高裁判決
会社更生法適用を受けたライフに対して過払い利息の返還請求をすると、決まって会社更生法適用前の部分については拒否してきます。それがとうとう最高裁まで争われて判決が出ましたが………まあ、会社更生法の趣旨からは、債権届出期間内に届け出られなかった以上駄目だという単純な結論に帰着するんでしょうね。奇しくも裁判長は、倒産事件の権威だった才口さんです。
ただ、過払い債権という奴は、債務整理を弁護士に委任して、弁護士が取引経過を開示させて利息制限法引き直し計算をしない限り、顕在化しません。こうした顕在化しない債権について、実際に届出を期待することは不可能だという点が考慮されなかったのは残念です。
他人のトラブルの解決を生業とする法律家は、他者の痛みに共感できる能力が必要です。
………と言ってみても、法律家も生身の人間ですから、他者と全ての感覚を共有できるなどというのは、実際には不可能だろうと思います。
たとえば、交通事故でよくある後遺障害の「むち打ち」。私は偶然、5年前に自分が追突されて、けっこう1年ほど症状を引きずり、最近でもやはり疲れやすいとかいう目に見えない後遺症は残っていますから、そのような目に遭っていない人よりは、むち打ちになった人の得体の知れない苦しさは共感できるつもりです(最近はこれが髄液の消失によるものという仮説もあるようですね)。
思い切り私事ですが、長男が生まれるまでは、やはり親になった者の気持ちはわかったつもりになっているようで、実際には芯からはわかっていなかったような気もしています。育児というものが、親の膨大な時間を無償で提供することでようやく成り立っていることは、自分が当事者になるまではわかりませんでした。「親バカ」という言葉がありますが、長男が生まれるまでは、親バカにだけはなるまいと思っていたものの、実際には、親バカにでもなっていなければ、育児なんぞ到底続けられない感じで、自分の子供を無条件にかわいいと思える人間の本能というものはやはりすごいと思わざるを得ません。
と言っても、すべての立場を経験することはやはり不可能ですから、法律家としては、後は想像力を鍛えるべきか、それとも知らないことは知らないと開き直って人と接していくべきか、思案するこのごろです。