昨年も同じころに同じような日誌を書いたのですが、またまた民事訴訟の訴状送達のお話です。
またまたヤミ金君に訴えを起こす必要があって、起こしたのですが、送達先住所にヤミ金君が居住していると思われるにもかかわらず(住民票もしっかりここにあります)、送達ができません。なぜか、郵便屋さんが「転居先不明」ということで持って帰ってきてしまうそうです。
依頼者の方に現地を調査してもらうと、雑居ビルの集合ポストの表札は、もともとのヤミ金の屋号ではなくて、得体の知れない謎の会社名に変わっていましたが、よく見ると、ポストにしっかり「○○宛の郵便物はここへ」という貼り紙がしてあります。「○○」とは、言わずと知れたヤミ金君会社の代表者ご本人の名前です。
なーんだ、やっぱり居るんじゃないですか。というわけで、その旨を上申書にして、ポストの写真とともに裁判所に再送達を申請しました。
しかし、またしても送達ができなかったそうです。どうして??と思い、裁判所に根掘り葉掘り聞いてみましたが、その結果は驚くべき内容でした。
郵便屋さんの報告によると、「この住所地にいた人は『この会社は存在しない。存在しない会社宛の書類など受け取れない』という一点張りであったため、送達ができない」とのことだそうです。
あのー、どう考えても、そんな屁理屈をこねている本人が、この会社の代表者ご本人に決まってるじゃないですか(赤の他人なら、そんな変な言い訳しません)………それを真に受けて帰ってきちゃう郵便屋っていったい。。。
そもそも、送達に関しては、民事訴訟法で、
と定められています。
つまり、訴状の送達をする責任を負っているのは裁判所であり、また郵便で送達をする場合は、郵便屋さんが裁判所の送達業務を行う担当公務員であるということです。それにしてはあまりに無責任ではないでしょうかね。あまりの事態に書記官と大喧嘩してしまいましたが。
DNA鑑定で親子関係不存在、持っているへその緒は一致だとすれば、へその緒がとれるまでの産院入院時期に取り違えがあったという、至極当然の三段論法で、判決は当然でしょう。「あってはならないこと」というコメントも当然。
しかし、問題なのはそれからです。
自分の出自を知りたいというご本人の痛切な願いは察するに余りあります。しかし、そのために他人のプライバシーを犠牲にしてご本人に関係資料を開示すべきか、という点は、ご本人の人権と他人の人権が鋭く衝突する、本当に悩ましい場面といえるでしょう。
この問題、出生届の不受理を巡って問題になっている代理母出産の場面でも発生します。自分の生みの母を知りたいという子供の願いと、必ずしも代理母であることを知られたいとは思っていない代理母の人権のどちらを優先するのか、簡単に答えのでない問題です。
石原都知事のように、後先考えずに勇気だけで行動できるなら簡単なのですがね。
不正アクセスによりウイルスばらまきの苗床になってしまった価格.comですが、標的にされた不運さはともかく、その後の対応には疑問が残ります。
「インターネット関連企業として“最高のセキュリティ対策”を施していた」 「過失はない」といいながら、攻撃を受けた原因、不正アクセスの詳細、対策、いずれも「他のサイトへの攻撃につながりかねず、警察の捜査にも支障をきたすおそれがある」と、公表を拒否。これでは「過失がない」と一人で吠えているにすぎず、誰も納得させられないでしょう。
悪しき前例を早速まねする動きが出てきたようで、OZmallも同じ言い訳ですね。
これですむなら、コンプライアンスなんてことに頭を使う必要もなくなり、私ども弁護士も大変楽です。
しばらく日誌更新をコンスタントにできていましたが、またまた間が開いてしまいました。
本日のこのイベントとかで、今週はもうほとんど仕事になりません。昨年はちょっとお休みでしたが、2002年、2003年に続いて今年も修習生の幹事役で、民事模擬裁判の代理人顧問役を務め、本日本番でした。
2年ぶりに担当して思うのは、「自分が一日尋問を行う方が、教え子の尋問を一日見物するよりよっぽど疲れない」ということでした。いやいや、裁判所の傍聴席の椅子があまりにもプアでお尻が痛くなるせいかもしれませんが。
けっこう修習生の方も努力の跡が見えて、主尋問ではなかなか味のある尋問もみせてくれたりもしますが、反対尋問になると、やはり苦戦して、最後には証人役を務める弁護士の方がたいてい上手で振り切られてしまいます。まあ、修習生時代の尋問などというのは、指導教官からけなされるためにあるようなものですから、これをバネに奮起していただければいいわけですがね。
本日、夜7時から台東寮の法律相談に行ってきました。
台東寮というのは、東京都と特別区が開設した路上生活者自立支援施設の一つで、上野駅近くの都有地に建てられたプレハブの建物に就労意欲のある路上生活者が入寮して、就職までの間滞在できる施設です。
ホームレスになってしまう方は、その直前には必ずと言っていいほどサラ金等で借金を抱え、これが支払えず、最後は家賃も払えなくなって追い出され、住居を失うという典型的なパターンを辿ります。従って、法的には債務を抱えたままの状態であり、再び就労してアパートも借りることができるようになり、住民票を移転すると、最初にくるのはサラ金の督促だったりします。これでは立ち直ろうにも立ち直れないので、この法律相談が始められたそうです(私は今年度からいつの間にか相談担当になっていました)。
実際には、言うは易く行うは………の格言のとおりで、施設滞在者は当然一文無し同然の方であり、資力はゼロ、定住所も収入もなく、就労予定のため生活保護受給者でもないですから法律扶助協会も使えません。この状態で弁護士が受任するとしたら、「後払いのあるとき払い」となってしまい、数ある法律相談の中でも最もボランティア度の高そうなものでしょう。
ただ、相談を受けてみると、多くの場合時効が成立していたりして、弁護士が緊急に走り回る必要のある事件は少ないようで、むしろ相談者の心理的バックアップの側面が大きい気がしました。
昨年の引っ越しの際に、事務所のネット環境は光ファイバー化したのですが、肝心の無線アクセスポイントは2002年に買ったこいつのままで、遅い802.11b環境のままでした。ネットはともかく、事務所内のファイル検索にもたつき、さらにはなぜかPCによっては共有フォルダへのアクセスが不安定になるなど、問題が出ていました。
そこで、一気に問題を解決すべく、3月中にこれを買ってあったのですが、忙しいのと弁護士が増えて事務所に誰もいない時間帯がなかなかなくなったことが重なって、作業を行うチャンスが訪れないまま。ようやく昨日夜から作業を開始しました。本日も夕方から事務所に行って、ようやくすべてのPCに新たな設定をすませました。しかし、なぜか一台だけ新しい無線LANカードのインストールができないまま………仕方ない、後は週明けです。トホホ。
【最高裁、消費者金融の取引履歴開示初判断へ】消費者金融会社が借り手側に取引履歴を開示しないのは違法かどうか――。全国の高裁で真っ二つに判断が分かれたこの問題で、最高裁第三小法廷が初判断を示す見通しとなった。上告を棄却する場合は必要がない弁論を6月14日に開くことを決め、10日付で関係者に通知した。違法性を認めなかった二審・大阪高裁判決を見直す公算が大きい。
債務整理で、貸金業者に対し、過払い金請求を行おうとすると必ずぶち当たるのがこの「取引経過開示拒否」の壁です。とにかく裁判を起こせば開示を行う業者も多いですが、逆に言うと裁判前には「一定期間前は出せない」などと平気で開示を拒否するところもあります。
それというのも、この取引履歴の開示は従来、金融庁のガイドラインでの定めが唯一の根拠であったため、開示を求める法律上の権利があるかというと、微妙な問題といわざるを得ず、債務者に対し、法的に開示拒否が違法かどうかというと、否定的な判断を下す裁判所が少なくなかったものです。
しかし、個人情報保護法が施行され、自らの個人情報の開示を要求できる時代になったのですから、これからは違うはずです。最高裁の事例は法律施行前ですが、このような時代背景を追い風にしていることは間違いないでしょう。
弁護士が書く文章のタイトルかよ(^^;
という突っ込みはともかく、なんの話かというと、もう足かけ3年も続いている入学金・授業料問題弁護団の件です。4月28日に出された横浜地裁の勝訴判決を、連休を挟んで、ようやくじっくり読むことができました(28日は夕方から外出しており、全文を見ることができないままでした)。
一番最初に、京都で出た判決を除けば、弁護団案件で、その後の判決は軒並み入学金の返還を認めてはくれないものばかりでした。
入学金の支払期限が、大学側によって一方的に、合格発表直後に設定されているばかりに、まだ他大学の合格可能性を残したまま、やむを得ず入学金を支払っているだけなのに、3月中に辞退をしても(=入学前に辞退しても)なぜ入学金を返してもらえないのか。素朴な感覚で、おかしな話です。
多くの判決で、入学金を返さなくていいという結論を採られたのは、もしこの請求を認めてしまうと、大量の入学辞退者による入学金収入で実質的に経営を支えている多くの大学にとって壊滅的な打撃が生ずるのではないかという、裁判官なりの「バランス感覚」が働いているとしか思えないのですが、私から見ると、受験生を犠牲にしてまで認めるべき「バランス」とは思えません。社会の悪弊を裁判所が追認しているだけのように思えます。
何より、理屈が成り立っていません。多くの判決では、入学金を返還しなくていい根拠として、「入学金は『入学しうる地位の対価』であるから、支払うことで受験生はこの地位を手に入れているから」という点を述べます。
果たしてそうでしょうか?入学金は、あくまで「『入学(=在学して教育を受けること)』の対価」ではないでしょうか?
このような理屈が成り立つのなら、不動産売買契約の頭金は、「売買の対価」ではなく、「売買しうる地位の対価」ということになり、弁護士への着手金は、「事件依頼の対価」ではなく、「事件を依頼しうる地位の対価」ということになりかねませんが、明らかにおかしな話です。
横浜地裁の今回の判決は、「『入学しうる地位の対価』などと言っても、結局は「滑り止めの対価」でしかない」「滑り止めの対価として支払われたものを、営利企業でなく公益法人である大学が返さないでいいというのはおかしい」と断じてくれたわけで、ある意味、最初の京都の判決以上に胸のすく明快な論理です。裁判所も捨てたものではない、勇気ある判決を書ける裁判官もまだいるのだ、と感じました。
しかし、この横浜地裁、実は、昨年9月に判決を出すはずが、無期延期にして結局7ヶ月も延ばしてしまったところです。これがなければもっと完璧だったのですがねえ。
しょっちゅう事件記録を持ち歩く弁護士にとって、鞄は必須アイテムです。軽くて、丈夫で、型くずれしにくくて、容量のある鞄が必要です。
私がずっと使ってきたのが、サムソナイトブランドのナイロン製の肩掛け鞄(写真左)でした。実はこの型、大学生時代からずっと使ってきたもので、だいたい2年くらいでよれよれになってしまうため、そのたびに同じものを買い換えてきました。写真に写っているのはたぶん6代目くらいです。
この鞄のいいところは、上述のような条件を兼ね備えているところ。ナイロン製なので軽く、しかし型がきちんとしていて容易には崩れません(写真のは、その崩れにくいものを酷使しまくって、崩してしまったものですが………)。そして容量も大きく、パソコンに加えて事件記録を2冊入れるくらいはへっちゃらです。
弁護士業界で、この鞄を見かけることは意外に多く、けっこう多くの人が愛用しているようでした。
ところが………このサムソナイトブランドの鞄は、エースという国内業者がライセンス生産をしていたものなのですが、昨年秋に、このエースが、ライセンス生産の終了を決めてしまったため、あえなくこの鞄も生産中止になってしまいました。
さあ困りました。なにせ10数年も使い続けてきた鞄です。どのポケットに何が入るのかまで体に染みついています。簡単に他の鞄には乗り換えられません。
そうはいうものの、使っている鞄は日々老朽化してしまい、ついには肩ひものクッションの役目をしているゴムパッドが破けてきてしまいました。こうなると時間の問題です。
仕方なく、本日デパートの鞄売り場をさまよったあげく、後継品を買ってみました(写真右)。同じエースの鞄ですが、厚みが調節できたりするギミックがいろいろついているようで、その分微妙に重くなってしまいました。手になじむには数ヶ月かかるような気がしますが、とりあえず使い始めることにします。
JR西日本福知山線の脱線事故、報道を聞けば聞くほど「暴走列車」だったようで、ご遺族の方の無念は察するに余りあります。
またJR西日本の事件以来の迷走する対応も、かつての雪印事件等を思わせるもので情けないものです。想定しているトラブルなんかは危機管理の範疇ではありません。想定外の事態が起こったときにどう動くべきかが本来のコンプライアンスの要のはずですが、上は社長から下は事故列車に乗り合わせた職員まで、想定外の事態には全く対処するすべを持ち合わせていなかったようです。
それはそうと、マスコミの方も、事件以来、JR西日本を「安全性よりも定時運行、スピードを優先させた」企業というキャンペーンを貼るのに血道を上げているようですが、事件までは外国と比べた日本の鉄道の定時運行への優秀さを褒め称え、新幹線、在来線のスピードアップを無批判に賞賛してきたのも同じマスコミであったことを忘れてはならないのではないでしょうか。
分刻みのスケジュールで動く現代人を支えるべくして、安全マージンを削りに削り、結果大惨事を起こしてしまったのだとすれば、JR側のみが責められるべきなのか、多少忸怩たる思いにとらわれます。
連休中にあっさりThinkPadシリーズの身売りが実行されていました。
旧IBM ThinkPad NotebooksのHPも、URLは同じながら、「Lenovoノートパソコン」というページタイトルがしっかり表示されていて、IBMではなくなってしまったんだなあ………という感慨を思い起こさせます。
当面、何も変わらないと喧伝されていますが、個人的に悲しかったのは、旧ラインナップのThinkPadの製品ページの残骸がすべて整理されてしまい、消えたこと。お引っ越しを機に、無駄なものを捨てたということなのかもしれませんが、淋しいですね。