ここで亀の甲より年の功、と言ってしまえば、はいそれまでで、若手の端くれたる私の出番はなくなってしまうので、少し言わせてください。
確かに弁護士にとって、場数を踏んでいるという経験はかけがえのない財産です。単に度胸が据わっている、ブラフが効く、駆け引きがうまくなるということのほかにも、ノウハウという財産は単に勉強で得られた知識にはかなわないものがあることは認めざるを得ません。
しかし、年とともに頭脳はやはり柔軟性を失っていくものです。特に変革期の現在、新しい立法や運用についていくのはなかなか大変なことです。また、相談者の話一つ聞くことをとっても、年とともに、経験により「聞き上手」になる技術と、頭が固くなって先入観が抜けなくなる可能性と相半ばします。
これに対し、若手弁護士は経験こそありませんが、それを補ってあまりある熱心さとフットワークの軽さがあってこそ、ベテラン弁護士をしのぐ場合もあります。
なお、司法試験合格者は必ずしも若者だけではないため、年齢だけで弁護士の経験を判断するのは危険です。同業者では、司法研修所を卒業した「期」によって、経験年数が判断できます。
例えば、私は48期ですから、平成14年現在、弁護士7年目です。当事務所の所長、由岐は36期で、弁護士19年目です。弁護士会内では、私は駆け出しから中堅にさしかかり始めたところ、由岐は中堅からベテランにさしかかり始めたところといえましょうか。
一般的には、弁護士登録後3年程度あれば、一般的な事件については最低限のノウハウは身につけているとは言えるでしょう。事件の見通しについても、ある程度はわかるため、見通しを誤って後で難渋する確率は低いといえましょう。
それより経験の浅い弁護士の場合は、事件の見通しという意味ではやや不安があることは事実ですが、きちんとした調査能力と熱意があれば、これを補うことは可能でしょう。
3年以上以後は、基本的には経験年数が多ければ多いほど、ノウハウはあると思ってもいいでしょうが、前述のように、「老害」が発現していないかには注意が必要かもしれません。