アメリカの何千人もいるロー・ファームには到底かないませんが、日本にも弁護士100人に迫ろうかという大事務所があると思えば、弁護士が一人でやっている個人事務所も多数あります(というか、数で言えば個人事務所の方が圧倒的に多いです)
まずこの両者、弁護士の能力に何か差があるのか、といえば、別にそのようなことはありません。大事務所にも使えない弁護士はいるでしょうし、個人事務所でありながらその世界では知らない人はいない辣腕弁護士もいます。
では、何が違うかと言えば、大事務所ほど、大きな案件をその事務所だけで引き受けられるという強みはあるでしょう。実際、大企業はいざ事件となれば大量の労力をつぎ込む必要のあるものが多くなるため、どうしても大事務所に頼る傾向があります。
この点、小規模な事務所は大きな案件は受けられないかというと、全くだめと言うことはなくて、そういう事務所の場合は他の事務所の弁護士と連携することで、大きな事件を受任することもあります。でも、効率性という点では大事務所にはかなわないかも知れません。
では、やはり、大事務所の方が質の高い法的サービスを受けられるのか?というと、これはケースバイケースです。
前述のように大量の労力を必要とする事件であればやはり大事務所とは思われます。しかし、大事務所であればあるほど、個々の弁護士の自由裁量の幅は少なくなりがちです。大きな事件を扱っていると言っても、分業制でやっているため、下っ端の弁護士には全体像は見えないでしょう。
これに対して、小さな事務所の弁護士は、小さな事件といえども常に自分が全責任を負って遂行するわけですから、事件の全体像をつかむ能力には長けています。大事務所の多くの弁護士より、自由裁量の幅が広い分だけ、フットワークが軽いということも期待できるでしょう。
言ってしまえば、大事務所の弁護士は有能なサラリーマン、小さい事務所の弁護士はやり手の個人事業家といえるでしょうか。医者に例えるとすれば、大事務所は大病院、小さい事務所は町医者だと思ってもらって結構です。検査機材が揃っていて、最新の検査や治療が受けられるのが大病院、しかし、3時間待たされて診察は3分で終わり、個々の患者の個性までは対応してくれない欠点もある。これに対し、町医者は最新の治療は望むべくもないが、かかりつけになることで気軽に何でも相談できる存在になる。法律事務所も似たものがあるような気がします。
ですから、どちらを選ぶかは、自分が抱えている事件の性質を考慮し、自分がどのような法的サービスを望んでいるのかを考えてから選んでいただければよいでしょう。