2年に一度の日弁連会長選が迫ってきました。
既に何度も触れているように、弁護士会は、こと選挙になると人口2万人の村落のように、選挙好きの人であふれかえります。
そしてこれが日弁連会長選ともなると、かつては票集めのためになりふり構わぬ豪華な接待が繰り広げられたとか。
最近では、そんな光景もあまりなくなり、ここ数年は専ら主流派対反主流派の対決です。
主流派は、現在の司法改革路線に基本的に賛成のグループ。反主流派は、現在の司法改革は保守反動勢力と財界によって進められるものであるとして、これに反対するグループ。もう私が弁護士になったころから基本的に同じような対立です。
面白いのは、選挙間近になると、それぞれの選対が突然政治団体(?)を旗揚げしてくること。たぶんこれは事前運動を禁止した選挙規定をすり抜けるために考えられた老練な知恵(?)なのでしょう。
主流派の今年の政治団体の名前は「明日の日弁連を築く会」だとか。確か前の前の選挙の際が「明日の日弁連をつくる会」で、前回の際も似たような名前だったよなあ。オリジナリティのないこと甚だしい。
これに比べると、反主流派の方がまだ意味がわかります。今回は「日弁連の再建にとりくむ会」だそうで。「政財界の走狗になってしまった日弁連」を正しい道へ戻すのだ!という意気込みは一応感じられます。ちなみに前回の反主流派の団体名は「憲法と人権の日弁連の会」だっけ。
しかし、何と言っても反主流派系政治団体としては、これも2回くらい前の選挙の際に旗揚げされた際の「弁護士法一条の会」というネーミングがもっともインパクトがあったため、その後どんな団体名を名乗ろうと(中心人物はいつも同じなので)、相変わらず「一条の会」としか呼んでもらえないようです。
注【弁護士法1条】弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
さて、現在の司法改革について、私はどちらかというと、やや懐疑派です。もちろん、裁判員制度の導入や司法過疎の解消の取り組み等、個々の論点では大賛成の部分もあります。しかし、例えば弁護士の増員については、業界エゴといわれるのを承知で言えば、増員の必要性は認めつつも、年間3000人の増員はあまりに性急で粗製濫造ではないかなあと心配しています。ま、最終的には国民が決めてしまったことですから後は国民に判断してもらうしかないと思ってますが。
この弁護士増員は、弁護士のプリミティブな本能的危機感に結構訴えるらしく、一条の会も、増員論反対をずっと前面に押し出しています。
ただ、一条の会について、それなりに正鵠を突いた指摘もあるとはいえ、どうもついて行けないなあという面もあります。議論をしていると、「反対のための反対」に終始していて、「それじゃあお前はどうしたいんじゃあ!」という感じなのです。
例えば、先日の法科大学院設置について、4校が不認可となったニュース、これなぞは弁護士増員反対という一条の会の立場からは当然のことであり、むしろ「4校しか不認可にならないのは茶番だ。もっと不認可を増やすべきだ」という議論になるのかと思っていましたら、どうも逆らしい。
一条の会によると「不認可が出たことで、法科大学院が文科省・法務省の支配下に置かれることがはっきりした」という理由で「不認可には反対」らしいです。でも一条の会の本来の理屈から言うと、法科大学院自体反対のはずなのですが、なぜか結論的には自由競争主義的になってしまっていて、何がなんだかわかりません。これはもう、例えば護憲を掲げる社会党が、自衛隊のシビリアンコントロールに反対しているようなもので、本質がどこかに行ってしまっています。
かといって、主流派のように、単なる楽観主義で司法改革に大賛成!とはとても言えないのが悩みどころです。