10年ほど前に小選挙区制が導入された際、小選挙区制は2大政党制につながる政治改革のための制度であるという説明がずいぶんされたような気がします。
結果はどうだったでしょうか。10年経っても野党は離合集散を繰り返し、一応民主党と自由党の再合流はなったけれども、よくよく数で見れば、「1+1/2政党制」と言われた社会党のころと大して変わっていません。
確かに旧来型の派閥は衰退しつつあるようですが、批判勢力が衰えているだけで、新しい批判勢力が育たない、単なる一強全弱型の体制になっているとも見えます。
一つだけ言えるのは「制度を変えただけでは中身は必ずしも変わらない」ということです。
我々の業界への新たなルートになるはずのロースクール(法科大学院)も、同じ轍を踏みそうな危うい部分があります。
6月28日の日誌で危惧した学費の点は、文科省が頑張って援助をすることで、私立のべらぼうな学費は避けられそうな雰囲気になってきて喜ばしい限りですが、もう一点。
そもそもロースクールは、現行司法試験の40倍という気の遠くなるような倍率を回避し、ロースクール卒業者は8割が司法試験に合格できる体制のためにつくられたはずではなかったか?
ふたを開けてみれば、申請された法科大学院の総定数は6000人以上とか。新司法試験の合格者が3000人と言っても、これでは合格率8割どころではありません。
新司法試験が、3回まで受験できるものとして考えた場合、
初年度:(合格者数3000)÷(卒業者数6000)=合格率50%
2年目:(合格者数3000)÷{(卒業者数6000)+(前年度出身不合格者数3000)}=合格率33%
3年目:(合格者数3000)÷{(卒業者数6000)+(前年度出身不合格者数4000)+(前々年度出身不合格者数2000)}=合格率25%
4年目:(合格者数3000)÷{(卒業者数6000)+(前年度出身不合格者数4500)+(前々年度出身不合格者数3000)}=合格率22%
という計算になり、すぐに合格率は2割程度になってしまいます。ロースクールへの入学倍率が5倍程度ですから、通算倍率は20倍以上で、結局そう大きくは倍率は下がりません。
倍率だけならいいですが、今度はロースクールにせっかく入学し、2,3年高い学費を支払ったあげくに法律家になれない人が8割近くも発生する構造になっているのです。
もちろん現行の司法試験でも大量の「司法浪人」が発生していますが、それでも彼らは就職しながら勉強することもあり得ますし、少なくともアルバイト等で自らの学費くらいは稼げる状態で頑張っているのが実情です。これがロースクールになると、カリキュラムに縛られバイトもできません。そして学費分の奨学金が出たとしても、いずれは返さなければなりません。
何か、制度をいじくったあげくに現行よりも受験生に酷な選択を強いるような中身になっていないでしょうか??