本日の朝日新聞の社説に興味深いことが書いてありました。
「経験を積み、能力のある弁護士を裁判官に登用する「弁護士任官」に、新たな意識と姿勢で取り組んでいこうという動きが、法曹界に広がっている。(中略)受け入れ側にも変化がある。最高裁は先に、一部の裁判手続きにパートタイム制の裁判官職を導入し、弁護士が業務を続けながら、同時に裁判官の仕事も引き受けられるようにする考えを打ち出した。」
私自身は最高裁がこのような方針を打ち出したのは初耳なのですが、パートタイム裁判官というのは、私も以前から導入を主張していた制度であり、基本的には大賛成です。
弁護士会の主張としては、理想はあくまで法曹一元(裁判官、検察官が弁護士の中から選任されること)でしょうが、現状では最高裁、法務省の根強い抵抗もあり、そこまで一気に改革するのは難しそうです。また、社説中でも触れられているように、いったん弁護士として事務所や顧客を抱えてしまうと、これを捨てて裁判官に任官するというのは相当勇気のあることで、なかなか強制できることではありません。アメリカのように、弁護士から裁判官になるのが当たり前で、しかも裁判官を経験したことが相当のステイタスになるという基盤ができあがってしまえば、そう問題はないのでしょうが、そこまで世の中が進むのには何十年か時間がかかるでしょう。
その点、パートタイムならば、弁護士業務の蓄積を全て犠牲にすることなく、裁判官になれますから、弁護士からの希望者も相当出ると思います。このパートタイム制度が行われるうちに、国民一般の弁護士任官に対する理解も深まるでしょうから、最終的な法曹一元への道筋も見えてくるのではないでしょうか。
気になるのは最高裁が今まで反対していたパートタイム裁判官を一転して容認するに至った動機です。私の見るところでは、最高裁は逆に、パートタイム裁判官を導入すると言うことで現状のキャリア裁判官(司法修習終了後に一斉に任官し、年功序列で昇進していくシステム)を維持しようとしているのではないかと思われます。ま、同床異夢でも、国民のためになることであれば、どんどんやったらいいのではないでしょうか。